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エッカルト司令官代理

「――令官。副司令官。エッカルト副司令官!」


 兵の予備声でエッカルトは正気を取り戻した。ラジモフが逃走した事により、一時呆然自失していたようだ。周囲を見回せば…相変わらず、城壁上で兵たちが忙しそうに走り回っている。戦争は継続している。そして、状況は何も好転していないのだ。


「エッカルト副司令官…?ど、どうされたのですか?」


「…いや、なんでもない」


「そ、そうですか。それと、その…ラジモフ司令官の姿が見当たらないのですが、どうされたのですか?」


「司令官は――」


 思わず、「この要塞から逃げたのさ」と言いかけ口を噤んだ。それは事実ではあったが、そんな事が兵たちに知れ渡ってしまえば巨大要塞フルングニル軍の士気はガタ落ちになる。


「ラジモフ司令官は…自身で兵を率いて出撃するために、準備を行っている」


 そう嘘をつくしかなかった。


「し、司令官自らが…!これで我らの士気は上がりますね!」


「…ああ」


 当然、ラジモフは逃げているのだから出撃する事などできない。故に、しばらくしたら『司令官は負傷し後方へ下がった』という新たな嘘で周囲を騙さなければならなかった。


 正直、エッカルトはそのような嘘を兵たちにつきたくはなかった。出来る事なら、全てをぶちまけてしまいたかった。しかし――それはできない。巨大要塞フルングニル副司令官として――そして司令官代理として、この要塞を守るために。


「…負けてたまるか」


 エッカルトは小さく呟く。


(――勝ってやる)


 そして逃げ出したラジモフも、攻め寄せる敵兵も…全ての鼻を明かしてやる。


 そう決意した。

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