竜の一撃
ズメイ・バルトシークは軍曹の階級を与えられ、エレオノール千人隊へと入隊した。バルトシークは元務竜兵隊の隊員たちから、特に竜に乗るのが得意な者4名を選び出し、竜の乗り手とした。
こうして、エレオノール千人隊配下、竜兵分隊が誕生する事となったのだった。もっとも、その存在は秘匿され、移動時も竜兵たちは別行動を取った。そして――ついに、巨大要塞攻略戦で日の目を見る事になったのだった。
「行くぞォ!野郎ども!」
巨大要塞へ向かって突進する5頭の竜、その先頭を進む1頭の背に乗るズメイが叫んだ。
「オオオ!!」
後ろを進む竜兵たちが雄叫びで答える。堂々たる体躯を銀の甲冑で覆い、竜の背に跨り疾駆するその姿は、古の絵物語を彷彿とさせた。
「迎撃…!迎撃だ!あの竜共を狙え!」
エッカルトが命令を下す。竜たちに向けて矢の雨が降り注いだ――が、その分厚い鱗に対して、矢は全くと言っていい程に効果がない。
「駄目です!副司令官!」
兵が懇願するような声をあげる。
「それならば…竜に乗る兵を狙え!」
今度は、竜に乗るズメイ達に矢が集中する。しかし、彼らは全身を分厚い甲冑で包んでいる上に、竜の羽が彼らを覆う形になって竜兵たちの遮蔽物となっている。
巨大要塞兵の必死の射撃もむなしく、竜たちは一向にその勢いを緩めず…ついに、城壁間際まで近付いた。それでもまだ、その速度を落とさない。さらに竜の背、竜兵たちの乗っている横には巨大な木製の杭が括り付けられていた。竜は背を屈め、その杭を思い切り城壁に打ち付ける。
「や、やめろ…!」
エッカルトの叫びを聞き入れるような竜たちではない。ズメイの竜に続いて、次々と竜たちの杭が城壁に打ち込まれた。




