竜兵分隊3
「力を貸せって…そりゃあ、聖王国軍に入れって事かい?」
「はい、その通りです。我々は、あなた方から鹵獲した竜を実戦で使うつもりです。しかし、竜の乗り手がいないのです」
「ふうむ」
男は、髭だらけの顎をぼりぼりとかいた。
「ご存じでしょうが、かつて敵国にいたとしても投降後にその国で軍人として活躍する者はいます。もちろん、無理強いはしませんが…」
「ああ、いいぜ」
「え?」
「あんた方に力を貸すって言ってんだよ」
男は、あまりにもあっさりと言ってのけた。もう少し迷うだろうと思っていた椿とエレオノールにとっては、意外だった。
「ただし、ひとつ条件がある。俺があんたらの部隊に加わったとして…いつか、帝国軍と戦うかもしれねえよな?」
「はい」
「その時、もしかしたら敵の中に元々俺らのいた部隊…特務竜兵隊が混じってるって可能性もあるよな」
「ああ、そういう事ですか…分かりました。その時は、あなた達は出撃していただかなくて構いません」
元々いた部隊と戦う、という事はかつての仲間と刃を交えるという事だ。さすがにエレオノールもそれを強いるつもりはなかった。だが、男は意外な事を言い出した。
「いや、違う。敵の中に特務竜兵隊がいたら…ジークフラムの大将がいたら、俺を優先的に戦わせてもらいてえんだ」
「いったい何故…?」
かつての仲間、そして昔自分がいた部隊の隊長と戦いたいというのは、尋常な申し出ではなかった。
「俺は、あの人と戦いてえんだよ。…ま、その辺りについてはいつか話す時が来るかもしれねえ。で――俺の願いは聞いてもらえんのかい?」
「…はい、あなたが望むというのであれば――敵に特務竜兵隊がいた場合、優先的に戦っていただきましょう」
「それじゃあ、決まりだな。俺の名はズメイ・バルトシークだ。よろしく頼むぜ」
男は立ち上がり、背筋を伸ばして敬礼を行った。




