竜兵分隊2
竜はアンスバッハ家の領内にある洞窟に隠され、竜兵隊隊員達は聖都で憲兵に引き渡され…それから、時が過ぎた。
エレオノールが千人隊隊長に昇格し、北部要塞への赴任が決まった。その時、竜をどうするのか…という話が、千人隊内で持ち上がった。
当然、戦力として竜がいれば心強い。連れて行くに越したことはないのだが…、
「でも、実戦で自分たちに竜が扱えるんっすかね?ちょっと難しいんじゃないかと思うんすけど…」
とエマ。
彼女の言葉通り、竜を実戦で使う事ができるのか――という点においては不安があった。洞窟に隠した竜の世話は、エレオノール隊の隊員が行っている。その過程で、竜も随分とエレオノール隊の隊員に慣れてきたようだったが…かと言って、実際に竜に乗り戦う事ができるかと言われれば、まだ訓練不足だった。
「うん、だから…元々この竜に乗っていた人たちの力を借りられないかなって思ってるんだ」
元々竜に乗っていた人、それはつまり元帝国兵である竜兵隊隊員達の事だ。椿は彼らを千人隊に加えられないかと考えたのだった。
捕虜となった元竜兵隊隊員たちは、牢に収容されていた。聖王国の規則では、捕虜となった者は最初の半年は牢に入れられる事になっているからだ。
椿とエレオノールは、その牢を訪れた。牢屋というだけあって薄暗かったが、牢内は乾いておりそれなりに清潔そうだった。
「ん?見回りの牢番かと思ったら…ジークフラムの大将をやっつけたっていうお二人さんじゃないか」
兵のひとりが、椿とエレオノールに気付いて顔を上げた。
「お久しぶりです」
エレオノールは、兵に敬礼を行った。椿もそれに倣う。あくまで、相手を軍人として遇するという気持ちの表れだった。
「こいつはどうも」
兵も敬礼を返した。髪も髭も伸びっぱなしになっているが、牢屋暮らしにも関わらず筋肉は衰えていない様子だった。怪物の如きジークフラムの下で働いてきたというだけあって、その肉体は頑強らしい。
「で、どうしたんだい?こんな場所に来て」
「単刀直入に申します」
エレオノールが答えた。
「私が身元引受人になり、あなた方の釈放を申し出ます。ですので――どうか、私たちに力を貸していただけないでしょうか」




