エピローグ7
「義兄上!どうなされましたか!?」
「いや、ツバキがエレオノール殿とキスをしたと聞いて…次はオレの番だと思ってな」
椿の肩を掴みながら、ボゥの問いに答えるカイ。その言葉を聞き、エステルがにやにやと笑う。
「え?ツバキ君にキス?それじゃあ次は私も立候補しちゃおうかなー」
「私も立候補します!…っていうか私、途中からほとんど皆さん達と話す機会がなかったんですけど…覚えてます?」
ロランがため息をつく。
「ふふっ……それなら……次は私も軍師さんにキスさせてもらって……いいかしら……」
と、イゾルデ。
「ははあ。みんな若いねえ。うんうん、いい事だ」
「はぁ…自分としては、もう少し静かにしてもらいたいんだけど」
レイアが微笑み、ウルフヘレが肩をすくめる。
「いや、こうして騒げるというのは幸せな事だ。もしもここに至る途中で挫けていれば今こうして騒ぐ事も出来なかった」
「ええ。俺もそう思います」
オスカーの言葉にガレスが頷いた。
「本当に…その通りでございます。エレオノール様の…お幸せそうな笑顔を見る事が出来…この私、この歳まで生きてきて…本当に、良かったと…心から思います…」
「泣くのは早いんじゃないんですかい、ホフマンさん。軍師殿とアンスバッハ殿の子供が生まれるまで、涙は取っておいた方がいいですぜ」
ホフマン目に涙を浮かべ、その横でズメイが苦笑する。
そんな面々の間をスルリと抜けて、小柄な少女が椿の近くにまで迫った。
「ボクも…ちゅーしたいんだけど」
椿に抱きつき、唇を近付けようとするハティ。
「何!?させんッ!」
慌ててカイがハティをブロックした。そして、2人は椿を巡って戦いを開始する。
「おおっ…カイさんvsハティちゃん…これは興味深い一戦っすね…!しかし…どっちを応援するべきか、悩むところっす…!」
両者とも仲の良いハティは、悩まし気な様子で2人の戦いを見守っている。
「ツバキ」
椿へ近付いたエレオノールが、彼の手を引いた。少年はその掌を握り返す。目の前ではカイとハティがもつれ合い、その向こうで皆がその様子を楽し気に眺めている。笑みを浮かべる者、肩をすくめる者、感動で目に涙を浮かべる者…その表情は様々だったが、皆幸せそうに見えた。
(ああ…そうか。僕は…このために戦ってきたんだ)
少年は、ふとそんな事を思う。騒がしくて、ありふれていて…それでいて幸せな日々。このかけがえのない時間を守るために、自分は戦ってきたのだと。全てが終わった後になって椿は改めて気がついた。
カムランや、ユンカースやリヒター…その他大勢の者が命を賭けて守りたかったのは、この瞬間だったのだと。
「ねえ、エレナ」
「なんだい?」
「僕は…今、凄く幸せだよ。みんなが居て――隣にエレナが居てくれて」
「うん、私もだよ。これ以上ないほどに…幸せだ」
エレオノールと見つめ合いながら、椿は願う。この先もこの幸せな時間が続くようにと。
そして、愛する彼女と共に誓う。この幸せな時間を守るために、この先いかなる苦難があろうとも共に手を取って歩んで行こうと。
解析スキルしかないけど最強軍師になって女騎士さんと一緒に異世界天下統一を目指します 完
第一話を投降した時はこのように長い作品になるとは思っていませんでした。
にもかかわらず、途中で挫ける事無く最終話を迎える事が出来たのはこの作品を読んでくださった皆さんのおかげです。
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。




