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戦いの後6

 戴冠式――その名の通り、王や皇帝となる者が王冠もしくは帝冠を(いただ)く儀式である。エレオノールはすでに皇帝を名乗っていたが、それはあくまでヒューゴに対抗するためのもの。正式に皇帝と認められるのは、戴冠式を経ての事となる。


 しかし、エレオノールの戴冠式を執り行うについて問題がひとつ生じた。それはつまり、『誰から冠を戴くのか』という事である。


 聖王国や帝国、北統王国の慣習では、王位を継承する者に冠を与えるのは先代の王の役割だ。王が亡くなっていた場合は先代王妃。王妃も亡くなっていた場合は、生前に王や王妃が指名していた代理人(王族か高位貴族)が冠を与える役割を担う。だが、エレオノールの場合は冠を授ける先代もいなければ、その代理人も存在しない。


 さて、誰がエレオノールに冠を与えるべきか――その件に関して、議論が起きた。いや、正確には議論が起きかけた。だが、


「そりゃもう、ツバキくんしかいないでしょ」


 まるで当たり前とばかりにそう言ったのは、エステルだ。その言葉にレイアも頷く。


「そうだねえ。今のエレオノールと並び立てる存在といえば、ツバキくんしかいないね。何しろ、皇帝エレオノール・フォン・アンスバッハを誰よりも近くで支え続け…そして、最大の敵であるもう1人の皇帝、ヒューゴ・トラケウを討ち取ったのは彼なんだから」


「そうだな。先の大戦における勝利は、ツバキくんによるものだというのは誰もが知っている。ツバキくん以外の誰が冠を授けたとしても、おそらく皆は納得しないだろう」


「珍しく気が合うな。オレも同意だ。ツバキ以外の者などありえん」


 と、オスカーとカイも賛同の意を示した。無論、その意見に異を唱える者はいない。


「という訳で…よろしくね、ツバキくん」


 そう言ってウインクしてみせるエステル。


 こうして椿は、エレオノールへ帝冠を与えるという大役を担うこととなったのであった。

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