戦いの後5
「エレオノール・フォン・アンスバッハ陛下の事績について、私から述べさせていただきます。エレオノール陛下は、アンスバッハ公爵家の長女として生まれ…」
エレオノールが今現在に至るまでの事績がホフマンの口から述べられる。皇帝の血統に生まれたエレオノールだったが、その道のりは決して平坦ではなかった。むしろその高貴な血筋ゆえに周囲からは警戒され、思うように力を発揮できない日々が長く続いた。そんな彼女の経歴を離すホフマンの瞳からは、涙が溢れ出そうとしていた。
それは、皆と共に居並ぶエマも同様だった。常に近くでエレオノールを支えてきた2人にとって、エレオノールの努力が報われた事はこの上ない喜びだ。
涙で声が震えないよう必死にこらえつつ、ホフマンはエレオノールの事績を言い終える。そして、最後にこう付け加えた。
「僭越ながら…私から、一言付け加えさせていただきます。エレオノール皇帝陛下は…貴い血筋の家にお生まれになりました。しかし、私が今日までエレオノール陛下にお仕えしてきたのは…その血筋のためではありません。エレオノール陛下のお優しいお人柄とその揺るぎない信念を慕い…今日までお仕えして参りました。おそらくそれは、ここにいしゃっらる方々も同様と思われます」
ホフマンの言葉を否定する者はいなかった。ここにいる面々がエレオノールと共に歩んで来たのは、エレオノールが皇帝の血を引くからではない。その人間性に惹かれたが故だ。
「それでは引き続き、戴冠の儀に移るといたしましょう。――ツバキ・ニイミ殿…前へ」
先ほどエレオノールがこの部屋に入ってきた際開いた扉が、再び開く。そこから姿を現したのは…王冠を手に持つ少年だった。




