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酒場

 二日目、夜。椿たち4人は市街地北部の酒場で酒を飲んでいた。と言っても、実際に酒を飲んでいたのはエステルのみで、そのエステルにしてもいつものように浴びるようなペースで酒を喉に流し込んでいる訳ではなかった。4人は待っているのだ。巨大要塞フルングニルの司令官が酒場に到着するのを。


 いや、酒場と言うよりも社交クラブと言った方が良いのかもしれない。一度に5、60人は一緒に酒を飲む事ができるだろう広い空間。床は大理石。天井にはシャンデリアも見える。今埋まっている席は、全体の3割ほどと言った所か。


(そろそろ到着するはず…)


 椿は窓の外を眺めた。すでに日は落ちている。事前の聞き込みでは、そろそろ司令官が到着するはずだった。その情報が得られたのは、エステルの働きによる所が大きい。彼女は、自身が酒好きという事もあって周辺の酒場の店主ともすぐに親しくなった。そして今日、この店に巨大要塞フルングニル司令官が訪れるという情報を手に入れたのだ。


(僕たち、場違いじゃないかなあ…)


 ちらりちらりと周囲を見回してみる。周りにいるのは、高級そうな衣装に身を包んだ紳士淑女ばかりだ。椿たちも急遽衣装を調達したのだが、自分にそれが似合っているものかどうか椿には判断できなかった。


「ん?どうしたの、椿くん」


 エステルが問いかける。


「いや、その…僕たち、浮いてないかなと思って…」


 気品がありすぎるという理由で今回メンバーから除外されたエレオノールだったが、むしろこの場には彼女の方が相応しいように思えた。しかし、エステルは陽気に笑う。


「あっはっは。大丈夫だって。ここにいるのは『ただのお金持ち』だから」


「…?どういう意味ですか?」


「つまり、貴族でも何でもない…密貿易や何かでお金を稼いだ成金ばっかりって事。身のこなし、服のきこなしが貴族とは違うでしょ?ここはそういう人間が集まる場所って事よ」


 そう言われても、椿にはよく分からなかった。


「ま、とにかく…エレオノールちゃんのような本物の貴族より、私たちみたいな人間たちの方がこの場には相応しいって訳…」


 と言った瞬間、扉が開いた。軍服に身を包んだ人間が酒場に足を踏み入れる。

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