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最終決戦 決着

「ヒューゴさん。僕は…僕のスキルで、あなたの記憶を見ました」


 椿は見た。ヒューゴがこの世界に来てからあった事。そして、この世界に来る前にどんな日々を過ごしていたのかを。


 暗い部屋、ひとりパソコンのモニターを眺め続けるだけの日々。


「なんだ…私に、同情したのか?引きこもりで、周囲に疎まれ…挙句の果てに、異世界で人類を滅ぼそうなどという狂った考えに走った私を」


 ヒューゴの言葉に、椿は首を振る。


「僕も、あなたと同じなんです。僕も、この世界に来る前は…ひとりぼっちでした」


 周囲に溶け込めない、ちょっとした事で周りから浮いてしまった――そんなささいなボタンの掛け違いで周りから孤立してしまう。それは、誰の身にも起こりうる事。そしてその点では椿もヒューゴも同じだった。


 だが、椿はこの世界でエレオノールと…その他の沢山の仲間達と出会うことが出来た。だからこの世界を守りたいと思えた。


「僕は…あなたと、もっと早く出会いたかった。そうすれば…もしかしたら」


 もしもヒューゴが完全に今の考えに染まってしまう前に出会えたら…ひょっとしたら、仲間に…友達にだってなれたかもしれない。


 だが、そうはならなかった。少年は、ただただそれが悲しかった。


「ふ…」


 ヒューゴの顔に、穏やかな笑みが浮かぶ。ひょっとしたら彼がこんな笑みを浮かべるのは、生まれて初めての事だったかもしれない。


「そんな事で、涙を流す…とは…。君は…本当に優しい。確かに…君ともっと早く出会っていれば…。――いや、沢山の命を奪った私に…そんな事を言う資格は…ないか」


 ヒューゴが震える手を伸ばす。椿は、その手を握りしめた。


「君は、私と同じと言ったが…やはり…君と私は…違う。私は…君のように強くなれなかった。自分が傷つく代わりに…他人を傷つける道を選んだ。願わくば…君の進む道に…幸多からん事を。そうでなければ…私が…負けた甲斐がない…からな」


 そう言い残し、ヒューゴは息絶えた。


 奴隷から大将軍フィシュタル・ジェネラルに上り詰め、二国同時クーデターを成し遂げ謀略と武力で皇帝にまで成り上がった男には相応しくない…穏やかな表情の最期だった。

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