最終決戦35
「いい加減に…諦めたらどうだ!」
椿の剣を弾くと同時に、少年の体に拳を叩き込むヒューゴ。鎧を身につけている椿に、その拳は効果がない。だが、ヒューゴは構わず続けて二度、三度と拳を叩き込む。
「かっ…はぁ…っ。ぐっ…ううっ!」
椿の口から悲鳴が漏れる。驚くべき事に、ヒューゴの拳は椿の鎧を叩き割っていた。椿の鎧は、動きやすさを重視するために鉄板は薄くなっている。かつ、ヒューゴの斬撃で傷がついていた。とはいえ拳で鎧を叩き割るとは凄まじい力だ。
続けて、ヒューゴは椿の頭に剣を振り下ろす。しかし、その時を待っていたとばかりに、椿の突きがヒューゴを襲った。肩と腕の間…鎧の繋ぎ目を狙ったその攻撃が、ヒューゴに突き刺さる。
「貴様…何故足掻く!」
肩に突き刺さった椿の剣を振り払いつつ、ヒューゴはさらに椿に迫る。
「もう貴様は限界のはずだ。スキルを使用した反動!私の攻撃による負傷!もしも、もしも万が一私に勝ったとして…おそらく貴様も死ぬぞ、ツバキ・ニイミ。にもかかわらず何故戦う!」
繰り出される攻撃をかわしつつ、椿も反撃を行う。
いや、もはやどちらが攻撃しているのかすら判然としない。椿とヒューゴ、互いに血みどろになりもつれ合いながら互いに譲れぬ信念をぶつけ合っている。
「何故って…決まってるじゃないですか。僕は、この世界が好きだからです。例え死んだっていい…僕は、大好きなこの世界を…大好きな人がいるこの世界を、守りたい」




