最終決戦33
傷つき、体力を消耗した今のエレオノールでは戦いに割って入った所で椿の足手まといにしかならない。ここで戦うのはただの自己満足でしかない――エレオノールはそう承知しつつも、今すぐにでも椿を助けるために戦いの中に飛び込んで行きたいという衝動に突き動かされそうになる。だが、それを懸命に堪え…ただただ、少年を信じ戦いを見守っていた。
両者ともに鎧は傷だらけになり、疲労のために呼吸は荒い。一見すると互角の戦いだ。
「まさかここまで追い詰められるとは予想外だった。ツバキ・ニイミ…君は本当に強い」
ヒューゴは、目の前の少年に対し素直な感嘆の言葉を述べる。
「だが…やはり勝つのは私だ」
彼は打ち合いの最中で感じていた。椿の動きが徐々に鈍くなってきている事を。おそらくスキルを使い続けた反動だろう。むしろ、脳に負担をかけるスキルを使いつつここまで戦えた事が奇跡的と言える。もう間もなく、限界が来るはずだ。
そしてヒューゴの予想通り、その時は来た。
「くっ…!」
突如、椿の体が大きくふらついた。その隙を狙いヒューゴは剣を振り下ろす。椿はそれを剣で受け止めるも、大きく後ろへ後退しがくりと膝を折る。
「はぁ…は…ぁ…」
「私の攻撃に、ほとんど反応できていなかったな」
ヒューゴは少年を見下ろし、その様子を冷静に分析する。
「もしや…スキルの酷使で右目の視力を失ったか?ならば、もう解析は使えまい。ここで勝負ありだな」




