最終決戦32
椿の動きに違和感を覚えつつも、ヒューゴは攻撃の手を緩めない。対する椿はヒューゴの攻撃を受け流しつつ…再び反撃の一撃を放つ。
(やはり…鋭い…!)
椿の剣の鋭さに、ヒューゴは思わず後ずさる。
「以外に筋がいいな、ツバキ・ニイ。君に剣の才能があったとは意外だった」
「いいえ。僕には剣の才能なんてありません」
椿の言葉は本心だ。もしも剣の才能があったならば、自分はもっと多くの者を救えただろう…そう思い続けてきた。もしも、強ければ…ユンカースやカムランは命を落とす事はなかったかもしれない。だが、自分の才能ではどうあってもカムランやオスカーのような圧倒的な強さを手に入れる事は出来ないだろう。しかしそれでも少年は諦めなかった。
椿はこの世界に来てから、解析を使い他人の事を見て来た。ユンカースの、カイの、オスカーの、カムランの…そして何より、エレオノール・フォン・アンスバッハの姿を。そして、彼ら彼女らに少しでも近付くために剣を振り続けてきた。
ユンカースの技巧、カイの信念、オスカーの勇壮さ、カムランの正義。その他大勢の者達から、沢山の事を学んできた。自分では彼ら彼女らのようにはなれない。だが…それでも、確かに皆との出会いが椿を成長させてきた。
(みんなから受け取ったものと、解析があれば…僕は、負けない)
少年は前へと踏み出した。そして奇しくも同時に、ヒューゴも椿へ向かって踏み出している。
長きにわたる戦いの決着が近い事を、両者は予見していた。




