最終決戦14
エレオノールは全力で騎馬を走らせ、ヒューゴ軍の中を駆け進んで行く。その隣に進む椿が、前方を見つつエレオノールに声をかける。
「エレナ、このまま真っ直ぐ…次は右に!」
解析で判別できる敵の士気の高さ、指揮官の能力を考慮し、最も進みやすいルートを的確に選び出している。本来ならば、どのように優秀な指揮官であろうとヒューゴ軍を相手に止まらず進み続ける事は出来ない。だが、最高の騎兵指揮官エレオノールと最高の軍師椿…この2人がそれを可能にしていた。
(勝てる…相手がどれ程高い能力を持っていようと…僕とエレナ、2人で力を合わせれば…!)
しかし、ヒューゴまであと僅かというその時、椿の瞳に強力な敵の姿が映る。顔に傷のある女騎士…かつて馬上槍試合で雌雄を決した相手、クロエ・フィレルだ。今の彼女は、かつてのような傲慢な素振りもなければ威嚇の言葉すら吐きはしない。
ただ無言で剣を構えるその姿からは、命の代えてもエレオノールを止めるという気迫が感じられた。しかし、それはエレオノールの後方より飛来した矢により阻まれる。
「エレオノール隊長!ここが自分が!」
そう叫び馬上で弓を構える少女の姿に、フィレル上将軍は表情を険しくする。
「エマ・リッツ…!」
「馬上槍試合依頼っすね、フィレル上将軍!悪いっすけど、自分が相手させてもらうっすよ!」




