叡智の聖騎士5
「こんにちは」
しばらく窓辺の外を眺めていたミュルグレスだったが、そんな彼に声がかけられた。振り向けば、そこにいたのは黄金色の髪を持つ青年…カムラン・フォン・レオンハルトが立っていた。オスカーとの試合はもう終わったようだ。
「こうして話をするのは初めてだね、ミュルグレス・レイ」
「お初にお目にかかります。カムラン・フォン・レオンハルト殿」
「そんなに畏まらなくていいよ。僕の方が年上なんだし」
「いえ、この口調は性分でして。それで、何用ですか?」
「うん」
カムランはミュルグレスの隣に立ち、窓の外を見る。ミュルグレスも再び、窓の外に視線を向けた。彼らが今いる部屋は、王宮の中でも上層に位置する。窓からは聖王国の街並みが良く見えた。
「凄いと思わないかい?」
「何がですか」
「この街さ。この城も、遠くに見える下町の家々も…当たり前のように存在しているけど、どれも人が作ったものだ。僕はこの街を見るたびに思うんだ。人の持つ可能性は計り知れないってね」
「少し、大袈裟な気がしますね」
「そうかな」
カムランは苦笑する。
「だけど、1000年前にはここに街はなかった。ただの平地だったんだ。もし僕が1000年前に生まれていれば、まさかこんな立派な街が出来るなんて想像も出来なかったと思う。ミュルグレス・レイ…君は、聖王国の事をどう思っている?」
「どうとは?」
「聖王国の政治に不満を持った事はないかな」




