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叡智の聖騎士3

「世界を壊す…?」


「ああ。君も、私と同様にこの世界に不満を抱いているのだろう?君の事は調べたよ、ミュルグレス・レイ。君は聖王国で最も優秀な人間だ」


「最も優秀なのはカムラン・フォン・レオンハルトですよ。彼は私より年下だが、昇任は彼の方が早い」


 ミュルグレスは思った通りの事を口にした。聖王国では当時、カムランがちょうど頭角を現し始めていた時期だった。その昇進速度はミュルグレスを上回っている。


「確かにカムラン・フォン・レオンハルトは傑物だ。しかし、彼は元々が貴族出身。庶民の出でありながらこれ程の出世を重ねている君の方が優秀だと私は睨んでいる。いや、そもそも出世の速度など、どうでもいい。世間ではなく――このヒューゴ・トラケウが君の優秀さを保証しよう」


「光栄ですね。――と、ひとまずは言っておきましょうか」


「では、話を元に戻そう。ミュルグレス・レイ…私と共に世界を壊そう。この不合理で不条理な世界の全てを焼き払い、打ち砕き…何もかも、跡形もなく消し去ろう」


「狂っているのですか…?あなたは」


「そうかもしれないし、狂っているのは世界の方かもしれない。いずれにしても、君なら私の理想を理解し、そして実現のために大きな力になってくれる…私は、そう信じているよ。それでは、君は軍に戻るといい。シャルンホスト…彼を送ってあげてくれないか」


「ええ、承知しました。それでは行きましょうか、ミュルグレスさん。おっと、その前にこれにお着換えください」


 白髪の青年…シャルンホストは、ミュルグレスに帝国軍の騎士服(サーコート)を渡す。そして、ミュルグレスがその制服に着替えるとヒューゴ軍の陣地の外にまでミュルグレスを案内した。この当時のミュルグレスはまだ聖騎士(パラディン)ではなく、帝国軍の中に彼の顔を知る者はほとんどいない。帝国軍の騎士服(サーコート)を着ていれば、その正体が帝国兵に見破られる事はない。


「はい、あなたの馬もお返しします」


 そう言って、シャルンホストは陣の外に繋いであった馬の手綱をミュルグレスに手渡した。


「それでは、さようなら。またお会い出来る事を楽しみにしていますよお。ミュルグレスさん」


「私を…逃がすのですか?」


「ええ、あなたには聖王国軍にいていただいた方が我々にとって都合がいいですから」


「私は、あなた達の考えに賛同した訳つもりはありません。ここで私を逃がせば…あなた達の障害となるかもしれませんよ」


「いいえ、あなたは必ず(わたくし)達に賛同してくださるはずですよ、ミュルグレスさん。少なくとも(わたくし)とヒューゴ上将軍(ハイ・ジェネラル)はそう信じています」


 シャルンホストは悪魔じみた笑みと共にそう告げて、ミュルグレスを見送った。


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