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ヨハンネス・フォン・リーゼンバッハ11

「そうですか」


 ヨハンネスの言葉に、ミュルグレスはさして興味もなさげな返答を返す。彼の思考は、すでにヨハンネスから別のものに移っている。ヒューゴと合流し、エレオノール軍を倒すための戦略を練る事に向けられていた。だが…そんな彼の視界の端に、意外なものが飛び込んできた。


 右前方…やや離れた位置から騎馬で駆けてくる、ひとりの騎士。軽装に身を包み、顔や腕に包帯を巻いたその騎士は、ミュルグレス配下の者ではない。明らかに敵だ。しかし、それはあり得ない。ミュルグレスは、ヨハンネスを追うにあたって周囲に騎馬隊を展開させている。それは、万が一にもヨハンネスを取り逃がさないため。そして伏兵を警戒しての事だ。もしも敵であれば、右前方に配置した部隊が対処に当たっているはず。


(…右側の部隊を全て倒して来たのか?)


 右側配置した騎馬隊は、数は少ないが精鋭揃い。たったひとりで倒せるはずはない。もしあの騎士が、とてつもない実力を持っていた場合は除いて…だ。


「まさか…」


 ミュルグレスと包帯の騎士の目が合う。ミュルグレス・レイはその騎士の…彼女の瞳に覚えがあった。


「レイア・リヒテナウアー…!」


「やあ…久しぶりだね、ミュルグレス」


 聖騎士(パラディン)序列第七位…レイア・リヒテナウアーは包帯を外しその素顔を露わにした。

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