ヨハンネス・フォン・リーゼンバッハ7
牢に囚われているヨハンネスのもとには、何名かの門閥貴族が訪れた彼らはヨハンネスを嘲笑い罵倒し、去っていく。それは、自分勝手なヨハンネスに振り回されてきた門閥貴族にとっては、うっぷんを晴らす行為であったろう。だが、ヨハンネスにしてみれば今まで信じてきた者達からの裏切り以外の何物でもなかった。
「うう…クソッ!クソッ!クソッ…!」
牢の中でヨハンネスは頭を抱え、涙を流しのたうち回った。今までおだてられていい気になっていた自分が惨めで仕方がなかった。自分を裏切った門閥貴族達が憎くて仕方がなかった。だが、同時に…これが因果応報というものなのかもしれない、と心の片隅では理解していた。自分は取り巻き達におだてられ、さんざん他人を見下してきた。そのツケが回ってきたのだ…と。しかし、そんな思いを素直に受け入れられるほどヨハンネスは達観していない。その胸中は、やり場のない怒りと絶望で満ちていた。そんな時だ。
「ヨハンネス」
そんな風に自らを呼ぶ声が聞こえた。どうせ門閥貴族の誰かだろうと思い顔を上げなかったが、なんとその人物は牢の中まで足を踏み入れてきた。今までそんな事をした者はいない。ヨハンネスは、驚き顔を上げた。
「父上…?」
「ヨハンネス、大丈夫か?」
心配そうにこちらの顔を覗き込んで来る人物…それは、ヨハンネスの父であり、聖王国の現国王…アルフレッド三世こと、アルフレッド・フォン・リーゼンバッハだった。




