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ヨハンネス・フォン・リーゼンバッハ5

 屈強な兵達が部屋の中になだれ込み、ヨハンネスの体を拘束する。


「お前達、こんな事をしてただで済むと思っているのか!?自分達が何をやっているのか理解していないのか!?」


「理解していないのはあなたの方ですよ、ヨハンネス殿下」


 指揮官のひとりがヨハンネスの顔を覗き込む。彼は門閥貴族の出身で、ヨハンネスの側近と言っても良い人物だ。いつもヨハンネスに対してへりくだっていた男だが、今はその顔に侮蔑の色を浮かべている。


「我らは、ミュルグレス閣下につく事に決めました」


「なに…!?」


「実はミュルグレス閣下から我々に対して使者が訪れましてね。寛大なるミュルグレス閣下は、聖都を占領しても我々門閥貴族の地位を保証してくれるというのです。しかし、そのためには条件があるとの事」


 指揮官達の顔に嗜虐的な笑みが浮かぶ。


「その条件とは…国王陛下の身柄をミュルグレス閣下に引き渡す事です」


「父上の…?」


「ええ。ミュルグレス閣下は国王陛下を処刑し、王家を潰すおつもりのようです。現在、我々の別働隊が国王陛下の確保に動いていますが…残念ながら上手くいっておりません。国王陛下の周囲を固める近衛兵は、さすがに忠義に厚い。我々の提案を拒み、最後まで国王陛下を守るために戦う決意を固めています。そこで、我々は代案を立てた訳です。あなたは王ではありませんが、王位継承権第一位の王太子…拘束して差し出せば、ミュルグレス閣下も我々の忠誠を認めてくれるはず。そのような訳で、ミュルグレス閣下への献上品となっていただきます」

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