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ヨハンネス・フォン・リーゼンバッハ2

 ミュルグレス・レイは、圧倒的な実力差がありながらヨハンネス率いる聖王国残党軍を舐めてはいなかった。彼は、ヨハンネスの数少ない長所…逃げ足の速さをしっかりと認識していた。そして、ミュルグレスに求められるのはただ聖王国残党軍に勝つというだけではない。彼が自らに課した命題は2つ。確実にヨハンネスを討ち取り、『第三勢力である聖王国残党軍を完全に倒した』という事実を作り上げヒューゴ軍の士気を上げる事。そして、最速で聖王国残党軍を壊滅させヒューゴ軍の加勢に加わる事。完璧かつ最速の勝利を目指すが故、自らヨハンネスを追っているのだ。


「ひぃっ…ぐっ…うぅぅ…」


 ヨハンネスは馬を飛ばす。しかし、ミュルグレスとの距離は詰まるばかり。ヨハンネスの数少ない特技…逃げ足の速さですら、ミュルグレスの前では無意味だった。ミュルグレスは地形を見極め、最も馬に負担をかけないルートを選んでいる。がむしゃらに飛ばすヨハンネスの馬は、最初こそはミュルグレスとの距離を保っていたが徐々に疲弊しその速度を落としていた。


「ぐうっ…!」


 周囲を見回すヨハンネス。彼から少し離れた場所には、小さな林などの身を隠せる場所がいくつかある。そこに逃げ込めば、ミュルグレスを撒く事も不可能ではないかも知れない。だが…そちらには、ミュルグレスの配下である騎士の姿が見える。ミュルグレスはヨハンネスが逃げ込める場所に兵を繰り出し、隠れ場所を完全に潰していた。


 逃げ道を塞がれ、ヨハンネスはただ一直線に走るしかない。そして、手を伸ばせば近付くほどの距離に両者は近付く。


「はぁ…はぁ…っ!ミュルグ…レス…!」


 ヨハンネスは恐怖にガチガチと歯を鳴らしながら剣を抜いた。次の瞬間、すぐ傍まで迫っていたミュルグレスの剣がヨハンネスの剣を叩き落とす。


「あ…」


 ヨハンネスは、落ちていく剣に手を伸ばそうとした。だが、その手は途中で止まる。彼の胸を、ミュルグレスの剣が深く貫いていた。

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