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フェルマー・シャルンホスト4

 フェルマー・シャルンホストは帝国の中級貴族の家に生まれた。もっとも、貴族とは名ばかりの没落貴族。父も母もシャルンホスト家のかつての栄光に固執するだけの人間で、少年の頃のフェルマー・シャルンホストはそんな両親を軽蔑していた。いや、彼が軽蔑していたのは両親だけではない。幼き頃より頭脳明晰であった彼には、全ての者が等しく愚かに思えた。


 地位にしがみつく両親。その両親を見下す上級貴族。それらに媚びへつらい金を得ようとする商人達。彼らが大切にしているものが、シャルンホストにはくだらないものにしか思えなかった。


 そんな彼が青年となった頃に出会ったのが、ヒューゴ・トラケウという人物だ。シャルンホストが初めて出会った、自身よりも優秀と思える存在。ヒューゴは言った…『共に世界を壊そう』と。それは、子供じみた馬鹿げた妄想。だが…シャルンホストは、ヒューゴと共にその夢を歩むと決めた。地位、名誉、金、愛。何ひとつ価値を感じる事の出来ないこのくだらない世界で、ヒューゴの示した暗い夢こそが価値あるものに思えた。


 なるほど、くだらないこの世界でも…それを壊す瞬間というのは、ひょっとしたら心がときめくのかもしれない。積み木を崩し、崩壊させる子供のような…純粋な楽しさを味わえるかもしれない。シャルンホストは、そう考えた。


「残念ですよ、エステル・ラグランジュ」


 シャルンホストは、戦場を見下ろしながら呟く。


「あなたとの戦いの最中において、(わたくし)は…この世界のつまらなさから、ほんの僅かに解放された」


 自身と同等以上の実力を持つ相手との戦い。その瞬間だけ、シャルンホストは退屈な世界を忘れる事が出来た。


「ですが、こうなった以上…遠慮はしません。あなたの策を(わたくし)の策で全て封じ、物量差で押し切らせてもらいます」

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