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フェルマー・シャルンホスト3

「シャルンホスト閣下が負けるなど…ははは、冗談がお上手ですな」


 中年の指揮官は笑った。


「敵と我が軍の実力差は明らかではないですか。たとえ兵力が同数であったとしても、負ける事などありますまい」


「それならあなたが(わたくし)の代わりに軍団長を務めてみますか?」


 シャルンホストは、ニコリともせず言った。


「エステル・ラグランジュならばこの状況からでも逆転してみせますよ、きっと。…そうすればあなたにも彼女の凄さが少しは伝わりますか?」


「い、いえ、その、それは…」


「少なくとも(わたくし)は、全身全霊を傾けて軍を指揮しています。それは、そうするのが相手に対する礼儀だとかそんな下らない理由ではありません。そうしなければ、負けるから…一手でも見誤ればエステル・ラグランジュの策で逆転されてしまうから。そういった極めて実際的な理由のためです」


「…」


 中年指揮官は顔を青くする。彼はようやく気がついたのだ。シャルンホストが先程から述べてているのが冗談でもなんでもないという事を。


(わたくし)が現在勝っているのは、こちらの方が兵力が多いから…ただ、それだけの理由です。本当に…つまらない理由だ」


 シャルンホストは、その言葉通り心底つまらなそうに言い捨てた。

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