勝利への道16
エルンスト・リヒトホーフェンは、守りにおいてはシャルンホスト、ミュルグレスにも引けを取らない指揮官だと言って良いだろう。そんな彼が、兵力で上回りながら全力で防御に回った。本来ならば、カイといえどもその防御を突破する事は出来なかったかもしれない。しかし…カイは、その壁を突破した。
イゾルデが援軍に駆けつけ、サグラモールが中央で指揮を取り、ユーウェインが機会を作り、そしてボゥが切り開いた道。己ひとりでは辿り着けなかったその道を、カイは走る。
「軍団長、お下がりを!」
主を守るため、エルンスト軍重装歩兵部隊部隊長がカイとエルンストの間に割り込んだ。
「悪いが…相手をしている暇はない!」
僅か一撃で部隊長を屠ったカイは、なんと重装歩兵部隊の馬まで奪いその上に跨った。自身に向かって迫り来るカイを前にして、エルンストは思う。
(ここまで来れば…もはや、逃げる事は叶わないか)
万一逃げ切れたとして、この状態で軍団長たるエルンストが退散したとなればこの戦線における敗北は免れない。そうなれば…最終的にヒューゴ軍が勝ったとしても、エルンストは『戦いから逃げ出した卑怯者』として、処断されてしまうだろう。
(なら…覚悟を決めるか)
エルンストは、剣を抜いた。その時にはすでにカイ・ネヴィルの姿はすぐ眼前にまで迫っている。




