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勝利への道3
「えっと…それはどういう…」
エルンストの言葉が理解できず、部下は首を傾げる。
「強者は自分を強者と思い、優秀な人間は自分を優秀だと思う。当然だ、本当に強いし優秀なんだからな。けど…その結果、無理をする。『俺は優秀だからもっと戦える』と思ってしまう。しかし、無理をした結果として…いつか、どこかで足元を掬われる」
「…」
「実を言うと俺の親父がそんなタイプの人間でね。俺の親父も軍の指揮官で、優秀な人だった。けど…その優秀さに故に無理をして死んだ。その時俺は思った。俺は、絶対に勝てる戦いしか戦わない…と。もし勝てない相手なら、戦いを避ける。それが俺のやり方だ」
エルンストには、ヴォルフラムのような強さもアイヒホルンのような冷徹さもない。だが…強者を見抜き、その強者との戦いを避けるしたたかさがあった。それが彼を上将軍にまで押し上げ、今もこうして生き永らえさせている。
「カイ・ネヴィル…あんたは強い。だから俺は、あんたとは戦わない。悪く思うなよ」




