ヘルムート・リヒター
リヒターが叫んだ直後、岩壁の向こうから漆黒の鎧に身を包んだ突如騎士が姿を表した。その騎士とは他でもないヒューゴ軍の総司令官にして皇帝、ヒューゴ・トラケウだ。
「くそっ!」
リヒターは剣を抜き、迎撃の体勢を取る。
(なんで…この場所が分かんだよ!)
リヒター達は、敵への奇襲を成功させた後に数人ずつで散り散りになって逃走。その後にこの岩陰に集合した。この周辺は特に岩山が多く、ヒューゴ軍からしてみればリヒター達がどこに隠れているのかは分からない…はずだった。だが、ヒューゴ・トラケウはリヒター達の潜伏場所を暴きこうして目の前に出現した。
リヒターの眼前に、ヒューゴが馬上から振り下ろした剣が迫る。
「くっ…あ…!」
咄嗟に受けた。が、すぐに第二撃が襲う。それもなんとか受けた。だが、三撃目を受けた時、リヒターの剣は弾き飛ばされた。
「部隊長!」
リヴァーシュが叫ぶ。ヒューゴの剣が、リヒターの胸目掛けて突き出された。
「ぐっ…!」
避けるには間に合わない。受けるための剣を拾う暇もない。だから、リヒターは前へと足を踏み出した。その瞬間ヒューゴの剣がリヒターの体を貫く。
「がっ…はっ…!」
口から血が吐き出される。と同時に、リヒターはヒューゴを睨みつけ…自身を突き刺した剣を持つ、ヒューゴの腕を力強く握りしめた。




