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IIリンカーネイションII

 ディスプレイ上で数多の兵達が戦いを繰り広げている。彼らは、槍や弓、火縄銃といった武器を駆使して争い、もみ合いへし合い、互いの数を減らしていく。


 兵達を束ねる武将の上にはそれぞれの名前が表示されている。武将の一部は赤色のフォントで名前が表記され、もう一方は青色で表記されている。赤が『敵軍』青が『自軍』だ。敵軍の方が倍ほども数が多い。


 次第に自軍が劣勢になっていく。このまま戦いが進めば、武将が討ち取られるか士気がゼロになって部隊が壊滅、敗北となるだろう。


 突如画面左端から新たな部隊が現れた。青色のフォントで『森蘭丸』と表示されている。自軍の部隊だ。森蘭丸の率いる軍団が敵軍に奇襲をかけた。敵軍は崩れる。その隙をつき、全ての自軍部隊が攻勢に転じた。


 敵軍は壊滅した。


「弱いな光秀!僕の勝ちだ!ふふんっ!」


 新見椿にいみつばきは高らかな笑い声をあげた。彼がプレイしているのは、大人気歴史シミュレーションゲーム、『家康の覇道』である。


 日本の戦国時代を舞台にした作品で、プレイヤーは任意の戦国武将を選択、その武将を操作して合戦を繰り広げ天下統一を目指す。武将にはそれぞれパラメーターが割り振られており、それが個性を際立たせた。


『指揮』が高ければ大軍を率いるのに秀でる。


『武力』が高ければ局地戦で大きな活躍を期待できる。


『知謀』が高けれ奇策を用いて逆転が可能。


『政策』が高ければ都市を治めるのが得意。


 例えば、猛将として知られる本多忠勝は『武力』の値が97と高い反面、『知謀』の値は41と低めだ。逆に、豊臣秀吉の軍師として活躍した竹中半兵衛などは『知謀』が98だが『武力』は37。武田信玄のように、『指揮』『武力』『知謀』『政策』全ての面で高水準の武将もいる。


 それぞれの武将が持つ強みをどうやって生かすのか。それがこのゲームの醍醐味と言えた。そして、新見椿はその醍醐味にどっぷりとハマっていた。むしろ、それ以外には何も特技と言えるものがなかった。


 16歳。引きこもり。ゲームオタク。童貞それが新見椿の全てだった。


 そんな自分でいいのか、と思わないでもない。しかし、今更どうしようもないのだ。どの時点かは分からないが、どこかでボタンをかけ間違い、こうなる道を選んでしまった。


 ――もしどこかの時点でやり直せたら…。


 いや、そんな事考えても虚しいだけさ。


 それよりもゲームの方が大切だ。さて、次はどこを攻めるか…。


 そんな事を考えていた所で、ふとを鼻腔に漂う異臭に気がついた。プラスチックの焼けるような、嫌な匂い。


「なんだ?」


 辺りを見回す。部屋の隅から白煙が立ち上っていた。近付いてみればコンセントから煙が出ている。電源付近に埃が溜まり、そこに火がついたのだろう。


「うわっ!やばいっ!」


 慌てて駆け寄り、電源プラグを引き抜こうと手を伸ばす。ここで、ある記憶が蘇った。


(確か、5年くらい前に慌ててプラグを引き抜こうとして死んだゲーマーが話題になったような…)

 まずい、と思った。


 しかし、その時には体はすでにプラグを掴んでいる。プラスチックが溶け、中身が剥き出しになった電源プラグを…。


「あがっ」


 電流が手を伝い、肩を巡り心臓に到達する。


 新見椿。享年・16歳。死因・心臓麻痺。時世の句・なし。





 ――輪廻転生リンカーネイション・プログラム起動。


 ――モデリング…モリ・ランマル。


 ――スキル…解析アナリティクス付与。

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― 新着の感想 ―
[一言] 家康の覇道て。騙し討ちコマンドばっかり充実してそうだな
[一言] 年齢が統一されていませんでした。(17歳、16歳)
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