神代の秘密③
お義父さんの遺言とも言っていいあの警告。人である限り呪いに等しい力だという。でもきっとそれを呪いと感じなくなったら人間ではなくなっている、という事なんだろう。お義父さんは人間として戻っては来たが精神的にも相当な疲弊をしていた。だから病院のベッドの上で命を落とした。そういうものなんだろう。
「どうする?」
「ひとまずは実家には帰りたいかな……」
「家族で会った方がいいだろうしね」
「うん」
神代本家に向かうこととなり、お義父さんの病室の荷物なども一緒に持ち帰ることになった。貴重な有給は神代本家で過ごすこととなる。お義母さんになんて言おうか……葬式の予定とかも決めるんだろうしいろいろとこれから大変なんだろうな。そしてまるで狙ったかのように会社からの電話だ。
「はい」
「おう、俺だ」
「部長……さすがに早くないですか」
「そういうな。俺だってお前の義父の知り合いなんだぜ?悲しいのは一緒だよ」
「それで、何の用ですか?」
「お前しばらく休みな。もう決まってるんで有給扱いじゃないから復帰したら覚悟しろ」
「ええ!?話が早すぎませんか!?」
「じゃ、そゆこと!」
そういって電話を切られた。……なんなんだろうか、あの人は。何かを知っている態度でありながらそれを決して悟らせないとする立ち振る舞いはまるで最初から何もかもを知っているようで不気味さすら覚えてしまった。一日経ってからの電話なら納得はできるんだけど……お義父さんが死んでからまだ一時間もたたない。さすがに情報がいくのが早すぎる気がする。それにも関わらず会社を休みにされた。狙ってやってるとしか思えない……
「部長さん?」
「うん。しばらく来るな、だって」
「相変わらず不思議な人なんだ……」
「あの人、お義父さんとどういう関係なの?」
「うーん。よく知らないんだけどね、血はつながってない兄妹だって」
義兄弟……にしてはいろいろと詳しくないか?とは思ったが今は部長に対する追及をしている余裕なんてない。後回しになるのは少しむずむずするがそれでも後回しだ。
ゆうみ自体、部長とは何度か面識があるくらいでそれ以上のものはお義父さんからも聞いてないんだとか。まさか、観測者だったりして。そんな冗談はさておき、神代本家には俺が生きにくい理由が一つだけあった。あの場所は少し怖いんだ。神の使いをやっている家系だから当然なのかもしれないが、霊力が溢れているのか。背筋に冷たいものを感じることが多々ある。気のせいといってしまえばそれだけなんだけど、普通の人間が入ったら圧倒されてしまうほどの雰囲気があの場所にはある。ビビっていないとは言えないがそれでも他の人よりあの場の空気に慣れている程度でしかない俺はあまり乗り気ではないんだ。