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Time Loves  作者: ジャンマルγ
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不安な夜③

 神代一族。昭和以前、もっとさかのぼると第二次大戦直後に国民の不安を払拭するために大昔に存在していた本物の巫女の役割を持つ一族として再び表舞台に現れた一族だ。その能力は間違いなく「本物」であり、一部の裕福層はその力を悪用し、マスコミが流したい情報をいち早く受信させ、金を稼いでいた。しかしやはり世間一般からしたらそんなものが許されるはずはない。一族は政府のスキャンダルという事でバッシングを受け、再び表の世界からは姿を消した。本来は国民の不安を解消するためにその勤めを果たしていた一族が、悪用され、国民の不安をより掻き立てたというのは何とも皮肉な話だ。オマケにその一軒直後、その代の神使は息を引き取ったという。それからというもの、だんだんと存在が薄れていく。とはいえ数十年以上の年月だが。存在を世間が忘れたころ、ひっそりと暮らすことになりもう一度表舞台に出ることはおそらくないだろう、と。少なくともゆうみの世代は完全に神使というよりは神社の巫女、という側面の方が強かったという。もっとも、彼女自体の力はとても強く、気を付けなければ神の器になってしまう可能性があるというが。

 そんな一族の事情があり、元々父親は寿命が短い可能性があったことは本人から直接聞かされていたという。……とはいえ死因なんてものは当然選べない。がんという未だ人類が完全に治すことが出来ない病気になったのもまた、神の力を授かる一族故なのだろうか。


「あのね、一族の秘密には続きがあるの」

「続き?」

「うん。伝わっている話だけで確証はないんだけど……」


 彼女の話す話はまるでSFで日本に伝わる伝統だとは思えないものだった。しかし信じてしまうのはそれまでの信じることが出来る理由があったのも事実。

 一族は代々「一人だけ」過去を何度もやり直し、望んだ結末になるまでループし続けるという神からの呪いに近い類の力を行使できる存在がいるらしい。その能力は本人にすら受け継いでいる、というのはわからないし身内に観測できるものもいない。あるのは、能力の根源、最初にこの力を授かったという初代の少女が残した記録だけである。

「観測できないから立証できない」「観測できないから存在しない」。シュレーディンガーの法則、といった方が想像しやすいだろうか?ともかく、その能力は確実に今の代の誰かにも受け継がれていて、力が発動するのはその人間がもっとも望まない結末を迎える直前だという。


「お父さん、望んでいたというより死ぬのは軽れてたんだよね」

「でもお父さんは婿養子なんでしょ?」

「うん。でもうちの一族の力って不思議でね?外の人間でも条件が整えば告げる可能性はあるんだって。外向きだけはね」


 オリジナルの劣化、みたいなものなのだろうか。とはいえ、お父さんには少なからず死を予兆するようなことが最近多かったらしい。さっきの小包はたぶん、お義父さんなりの遺書、に近いものなんだろうな。開けてはいけないと知らず開けてしまったが……

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