頼れる部長
協力してくれるのは有難いんだけどどこか不安を覚えなくもない。部長は大体胡散臭い、というのは事実だし、胡散臭さで出来ている。胡散臭くない方がおかしいのだ。だからまあこの胡散臭さはらしいと言えばらしいのか。
「時間移動自体は俺は体験してないんだがな。多方の予想はついてるだろ?」
「お義父さんは移動してましたよね、多分」
「らしい。詳しくは本人しか知らんけどな」
「どんな感覚って言ってました?」
「ん?あー、寝て覚めたら夢だった。みたいな感覚って言ってたな」
「わかるような分からないような……」
曖昧な例えだがそれを言ったのはあくまでもお義父さんで部長ではない。お義父さんらしいっちゃらしいんだけどなぁ。でもやっぱりお義父さんはたまに分からないことを言う。それだけは間違いなく思った。
「まあ嫌だよなぁ、寝覚めが悪いよあの感覚」
「よくありますよね」
「そうそう。エナドリキメてから寝ると余計に多いよな」
「それは休んでください……」
とはいえお義父さんが時間移動をしていた、というのが確信に変わったのはどこかありがたさがあった。自分はひとりじゃない、そういう風に感じたんだろうな。でも単に有難いだけではなかった。次の時間へ行った時、最初からお義父さんにその事を聞けるというのはある意味メリットだ。まあ自分が同じように移動してるというのは悟られない方がいいだろうから、聞き方には気をつけるとして。情報としてはとても有意義なものを部長はくれた。
まあその代わり復帰した時に仕事を沢山押し付けられそうというのはひとつあるけど。でもまあ……その仕事へ復帰するのがどれくらいの時間を自分が体験しても、彼にとってはこの先の数週間とかその程度の出来事に過ぎない。それもまた、情報としてひとつ得たことだった。
「目的はわかったのか?」
「うーん。でも俺は何も望んでないんですよね」
「……そうか。じゃあわからんな」
「協力する気あります!?」
「あるさ!」
思った以上に一緒に色々と考えてくれることに少し驚いたが、まあこの人も部長にまで上り詰めた人間だ。そういう人望はあるんだろう。それに、なんだかんだ言っても自分とは違う視点で色んなことをアドバイスしてくれるから、めちゃくちゃ分かりやすいんだ。この人の部下でよかった……とは言いたいがらまあ部下になることまでがお義父さんと結託していたものだったとわかった時は複雑な気持ちになった。まあそのことを本人たちはあまり覚えてないんだろうけど。
色々と考えがまとまりつつある中で、ひとまずの目的は達成した訳だが。そのあとの更なる課題としてループの原因となった望みを探し出さねばならない。それも……繰り返す時間の中で思い出せ、ということなんだろうか。