神代のお役目のため
二人が勝手に仲良くなったくらいから、お義母さんの方から大事な話があると切り出された。お義父さんの事……と言うよりもこれからの話だろう。神代の話。
「さてみんな。神代の受け継いできた力が次は誰が引き継ぐのか分かりません。なれば、私たちは常に気をつけておかないといけないの」
「望みを強く持ちすぎると発症するんだよね?」
「そうよ。だからなるべくなら今のうちにやりたいことはやって起きなさい」
暗い話になって行く。俺もこの話を聞いている、というのが何より大事なことで、俺も能力を引き継ぐ可能性があるからだ。そうならないように望みだったりは今のうちに叶えたりして、望むものを自分の望む形でいくつもの時間の中から選択する。という性質上対策方法がそれしかないのだ。
それ故に……ほぼほぼ積み状態。今すぐにでも能力を誰かが引き継いでもおかしくないのだ。
「あの、お義母さん……」
「ん?どうしたの、ゆうみ」
「身体が……」
次の瞬間、ゆうみは倒れた。体調的にはだんだんと戻っていたはずだっただけに、ほんとに突然の事だったし、話をしている最中。その場にいた誰もが嫌な雰囲気を感じ取っていた。……なによりゆうみは力が特に強いため、身体が力を制御出来るようには出来ていない。もし本当に今この瞬間最悪の事態を想定出来るのだとすれば。ゆうみは……病院に運ばれた後、余命宣告をされる。お義母さんは真剣な顔でそう話した。
内心穏やかじゃないのは多分誰よりもお義母さんの方だ。立て続けに父親、娘と……神代家に生まれた運命から逃れられないぞ、というばかりのそれは確実に自分たちを蝕んでいるのだと改めて刻みつけられた。
神様の気まぐれ。それさえ無ければこんなことにはならない。神様の使い。そんなお役目さえなければこんなことにはならない。なってしまったから止められない。なってしまうからどうしようもない。
「あの子が目覚めたらまずは何を望んだのかを聞きましょう」
「……もし目覚めなかったら?」
「その場合はどうしようも無いわ……目覚めるのを待ち続けるしかない。あの子が、望んた結末を手に入れるまで」
「待つしか……出来ない」
その無力感に心をやられそうだった。神代の家の出じゃない俺にどれくらいその使命が大事なのかとかは正直わからない。でも、目の前で大事な人が危険なのに何も出来ない。その無力感。今はただただ、目覚めを待ち、彼女の望む結末を聞き届けなければ行けないのだ。