アルム兄貴の分も
月夜の街を一周し、夜の花畑に降りるとジュニアは泣き止んだ。
「まぁま!まぁま!」
「はいはい…」
俺の腕の中で花畑を見てはしゃぐジュニア。昼間に連れて来てやればよかったなぁと思いつつも喜んでくれてなにより。
「お前の父さんもな、俺が泣いた時花畑に連れて来てくれたんだ」
夜中、ペータ家を抜け出して背中に乗せて花畑を歩いてくれた。
それを思い出しながら灰猫宮殿の花畑を歩く。
「幸せだったなぁ、あの頃は。
そうだ。昼間に休みをもらって映画を見に行こう」
「…えーが?」
「ラムセスが出てる映画もあるんだぞ。でもジュニアが見たそうなのはお子様向けかな」
よくアルムは映画にも連れて行ってくれた。はしゃぐ俺とユリの横でつまんなそうに画面を見ていたのを思い出す。
「ほんっとに…楽しかったなぁ…」
ぎゅっとジュニアを抱き締めると頬に手を伸ばされた。
「おみじゅ…」
「あぁ……お水出たね…情けねぇな…俺…」
アルム兄貴を思い出すだけで涙が出る…
本当に本当に幸せだった…
「愛してるよ、ジュニア。父さんの分も俺が頑張るからな」
「あいっ」
暫く花畑を歩き回った後、俺は宮殿へと帰った。
後日、約束通りジュニアを映画に連れて行くとおおはしゃぎだった。
「なんか…微妙だったな」
「うん。でも子供には楽しいみたいだよ」
「悪くはないと思うよ。面白かったし」
「ジュニアも喜んでいる。それでよかったではないか」
ラムセスの権力で映画館を貸し切りにして5人で子供向けの映画を見た。