アルム兄貴の結婚の話
朝飯を食べ、片付けをすると俺達は灰猫領最北端のウードン島への上陸準備に入る。
「今年は此処で盆を迎えるんだねぇ」
「あぁ。今年からラムセスもローレライとセイレーン討伐に出るから俺達も行くけどな」
無事に王位継承戦を勝ち抜いたラムセスとセトは王になった。戦神ラムセス王、イケメンランキング1位。俺の憧れの人にまた会えると思うと胸が熱くなる。
「僕は戦力外だから赤芋剥き大会に出るだけだけど…」
なんとこのウードン島には赤芋剥き大会というジャガイモとは違う種類の赤い芋を剥く大会があるとのこと。それで今年は此処に来たって訳だ。
「それに…」
「ふんふんふ~ん♪」
舵をぐるぐる回して鼻歌歌っているアルム兄貴の後ろ姿に俺達の間には笑みが零れる。
「アルム兄貴、結婚するんだろ?ウードン島の半山羊人の酪農一家と」
弟が生まれてお役御免になった我らのアルム兄貴はお見合いでウードン島の同じ種族の酪農家と結婚する事になった。
これからはバンバン子供を増やして灰猫領の酪農家として貢献していくそうな…まだだけど。
「いいよな~アルム兄貴」
「いいと思うなら僕達も結婚しようよヴァン」
「ぶっ!冗談キツイって!俺はまだ美女と結婚する夢を諦めてない」
「…ラムセスと結婚したら許さない…」
なんかユリがボソボソ言ってるけど聞こえない。