…おとうさん
「……っ」
「ヴァン!」
「ヴァン?!」
弱弱しくヴァンの口が動いた。
そして、ぎゅっと…弱弱しく手が握り返される。
「……うた……うたって……兄貴…おとうさん……」
ヴァンが…喋った…
僕はアルムの子守歌をまた再生し、ラムセスと一緒に歌う。
「空が晴れたら船を出そう
空の向こうに鳥が飛ぶ
鳥を追えヴァン、その翼で
明日も今日も鳥は飛ぶ
お前も元気に飛んでご覧
島いっぱい、お宝いっぱい
後ろには僕がいるから
前だけ向いて飛んでご覧
ヴァン」
もう一度歌うとヴァンは大粒の涙を流しながら瞼を開いた。
「「ヴァン!!」」
「……ユリ…ラムセス…?
兄貴は…アルム兄貴は…?」
僕はなんて言えばいいか分からず顔を逸らしたけど…ラムセスはヴァンの手を握ったままヴァンの胸に手を下ろさせ
「此処に。ヴァンの中にいつでもアルム殿はいる」
と優しく言った。
「……そっか…」
それで悟ったのだろう…瞼を閉じて大粒の涙をまた零すヴァン.
「ヴァン、喉は渇いていないか?腹は減ってないか?」
「両方…水ほしい…」
すぐにラムセスは口移しでヴァンに水を与える。
「もっと…」
そういうヴァンにラムセスは微笑み、医者には下がるように伝え、控えていた従者にはお粥を持ってくるように言う。
「ユリも」
「…うん」
ラムセスに楽飲みを渡され、僕も水を口に含むとヴァンに口移しで飲ませてあげる。