第5話「失意の底」~ユリside~
第5話「失意の底」
「あれからヴァンはあのままか…」
「うん。アルムの墓の前から離れない」
もう何日もヴァンはアルムの墓の前から離れず、ずっと跪いてアルムの名を呼び続けている…。
「…仕方ねぇ。気は進まないがラムセスに連絡してやってくれ」
「分かった」
お祖父ちゃんに言われた通りに僕は憎き恋敵のラムセスに連絡を入れる…。
「……珍しいな、ユリ殿から連絡なんて…どうかしたのか?」
「…ラムセス…王。ヴァンが大変なんだ」
「ヴァンが?!何故?どうしたんだ?!」
「…ウチのクルーの一人のアルムが…ヴァンの育ての親が亡くなったんだ…それでヴァン…塞ぎ込んじゃって。ご飯も食べないし、寝ないし…ずっとアルムのお墓の前で泣いてるんだ…」
「…分かった。すぐ向かう」
ピッと超小型掲示板が切られ、数分するとラムセス王が目の前に現れた。
「ヴァンは何処に?!」
「こっち」
気は進まないけど……僕はヴァンの元にラムセスを連れて行く。
「ヴァン!!大丈夫かヴァン!!」
ラムセスが揺さぶるけどヴァンは反応しない…。
「ヴァン…こんなに痩せて…
ユリ殿、すぐに宮殿に連れて行くがよろしいか?」
「うん…お願いします」
「では、一緒に」
高等魔法であるゲートをラムセスは連続で使って、灰猫宮殿に着くころにはふらふらになっていたけどしっかりとヴァンを抱えて離さなかった。