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祈り
「さぁ、上陸準備だ!」
船を固定し、氷原へと降り立つ僕達。
「寒いね」
「さっぶ。厚着してもさっぶ」
暖かいコートを買って来たけどそれを着てても寒い。
「──っ」
「あれ、あったかい」
アルムが魔法を唱えると急にあったかくなった。
「ありがとな、アルム兄貴」
「いいえ。さぁ、元戦場へ行きましょう」
暫く歩いて行くとヴァンが歩みを止める。
「此処だ」
「何もないけど」
辺り一面氷で覆われた大地しかない。
「全部氷で覆われちまってるけど、此処で俺達戦ったんだ」
僕は参加していない戦い。何もないこの場所で多くの血が流れ、命が失われていったのだと思うとなんだか涙が出て来た。
「…全ての戦士、海賊、兵士…そして敵だった者よ…どうか安らかに眠れ」
ヴァンはそう言うと空間から花輪を取り出し、地面に置いた。
そして手を組み祈る。
「……安らかに」
「安らかに」
僕とアルムも同じように祈りを捧げる。
「リー」
スズちゃんは僕の肩に大人しくとまっている。
「さぁ、帰るか」