表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女は物理特化の冒険者を目指す。  作者: 玄峰 峡。
決断までに必要な道
8/60

ムカつく敵と理解できない神王様

「クソがっ……!」


 何がクソかって、体力切れですよ。

 体力が残り50。それなのに私は今、肩で息をしながら全力で走っている。

 この体力値だと、少し休むか、歩いた方がいいんだけど……


 絶賛、魔物に追われています!!

 もう帰ろうと思っていたのに、なんでそんなときに⁉︎マジふざけんな!!


 相手は虫型のはぐれワーキングビー。働き蜂が魔物化してデカくなった感じのヤツ。ぶっちゃけかなりキモい。


 普段は集団でいるから、遠目からもわかりやすくて近づかないんだけど1匹だけだったから見逃してしまった。

 気づいたのはあいつとの距離が1キロ切ったかそれくらいの時。そこから全力で逃げてます!!


 こんなことになるなら【神眼】の無駄遣いでもなんでも良いから、使って索敵しとくべきだった。

 今悔いても、もう遅い。次からは絶対にそうしよう。

 生きて帰れたらそうしよう。うん、絶対に。


 しかも、ワーキングビーは1匹だけでも今の私にはキツイ。

 速いし、毒持ちだし……時間をかけるときっと仲間がコイツを探しに来る。コイツはあくまで、集団からはぐれているだけだから。


 どうにかしないと……。

【強化】とか【凶化】あたりをして逃げられるか?いや、この体力じゃ身体が耐えられない。

 スキルに負けて心臓が破裂するか、動けなくなって魔物に喰われるか。どっちにしろ死ぬ未来しかない。


 どうする、どうすればいい訳⁉︎


 こうなったら、魔法に頼るしか無い?

 でも、足止め出来そうな魔法スキルは持ってないから、無理だ。


「……って、わっ!!」


 ワーキングビーが攻撃を仕掛けてきた。というか追いつかれた!というか回り込まれて攻撃しやがった!!

 咄嗟に八咫霧で防いだけど……針が腕に掠った。毒を少しだけど貰ったっぽい。


 まぁ、毒って言ってもただ単に体力を減らすもので、死なせるような代物じゃない。今の私の体力には致命的だけどね!


 というか、人が考え事してるときに攻撃してくんな!!必死に逃げて戦闘回避しようとしている人を狙うな!!

 ムカついた。かなりイラッときた。何が何でもぶった斬る。


 こいつを絶対に斬る。

 そう、闘志を燃やして八咫霧を構える。

 どの道逃がしてくれなそうだし、やるっきゃない。


 《コール。スキル【毒耐性】を獲得しました。【毒耐性】がLv.3になりました。》


 グッドタイミング!!けど、体力が38まで落ちた。しかも、じわじわ減っていっている。

 体力が0になっても死ぬことはないけど、動けなくなる。イコール、殺される。


 一体どうすれば……


 そうだ!ぶっつけ本番で不安しかないけど、やらなきゃ死ぬ!!

 こいつに殺されるのだけは私のプライドが許さない。やってやる!


 魔力を急いで身体中に回す。

 それに加えて魔力で心臓の周りに壁を作るイメージをする。

 そうすれば、心臓の破裂は防げる……はず。


 なんとか出来たっぽい。多分。

 ここで迷ってる暇はない、やらなくちゃ!


「スキル【強化】!!」


 身体だけににスキルをかけるのではなく、魔力自体にもスキルをかける。二重構造で【強化】しているイメージで。

 ……なんとか、かかったっぽい。魔力はめっちゃ減ってるけど、どうせ表示不可能な数値。機にする必要はない。


 それより体力の方は……

 よし、体力の減りはそこまで大きくない。ただ、急いでキメないとヤバい。死ぬ。


 でも、ただ単純に身体を強化するよりも動きが速いし、これならいけるかも!いや、いってみせる!!


 そう思って、ワーキングビーに攻撃を繰り出す。

 向こうは、私が急に早くなったことに理解が追いついていないみたい。


 今なら行ける、そう思って、思いっきり腹を斬り裂いた。


「終わったー……」


 急いでスキルを解除すると、残りの体力は14。

 でも、毒の効果は残っているから少しづつ減っていく。


 とりあえず、核と、ついでに毒針を頂いて【収納】に入れる。

 残り体力6。


 今からじゃ家には帰れない。帰る前に力尽きる。

 そう思って、近くの木のウロに身を隠した。


「これじゃあ、約束の時間までに帰れないなぁ……」


 独り言を呟いて、私は目を閉じた。


 暫く家を出してもらえないかも。

 まぁいいや。その為に毒針も頂いたんだし。


 もう、無理だ。頭もうまく回らなくなってきてる。

 しばらく休もう……


 《コール。スキル【毒耐性】がLv.4になりました。》

 《コール。スキル【魔装】を獲得しました。》


 おやすみ、神王様。魔物が近づいてきたら教えてくれると嬉、しい……な


 《……コール。称号【神王の友】を獲得しました。それにより、神聖召喚で神王を召喚できます。》



 その称号獲得のコールはその時の私の耳には届いていなかった。

 それの存在を知ったのは日が暮れかけたときに目覚めて、ステータスを確認してからだった。


 神王様、私をどうしたいんですか……。

 そう思って、暫く動けなくなって、家に帰るのが更に遅れたのはいうまでもないことだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ