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最後に

 あれから数十年が経った。いや、もしかしたら数百年なのかもしれない。

 あの日の私の勘は見事に当たり、万事うまくいった。


 妹に前世の記憶はなく、フィルステラスという名のチャーチを守護する、聖霊だと名乗った。

 別に、前世の記憶を思い出してほしいというわけでもなかったから、そのまま放置した。

 ハロスによると、どうやら彼女はずっと眠っているような感覚だった、ということだったのでその間に起きたラグのようなものだったのだろう、とのことだ。


 あのあと、対魔王の風潮は徐々に収まり、互いに手を取り合って生活するようになった。

 ライアーナは無事に魔王様と挙式を盛大に挙げ、2人の子どもを授かった。子どもたちはとてもやんちゃで、魔王軍の兵士は勿論、近隣の街や村の人たちからも愛されて、良い王様に……と思ったら、家を飛び出して冒険者になった。


 それに関して魔王様が、

「やっと、隠居できると思ったのに」と少し悲しそうな目をして溢したのは、今となってはいい思い出だ。


 私はというと、いつになるかはわからない期限が来るまで、いろいろなダンジョンや魔物が出ると噂の場所を駆け回り、新しい世界の宣伝をした。

 みんながみんな、すんなりと受け入れてくれるわけではなかったが、時間をかけて説得した。


 48歳の誕生日にようやく準備が整ったとか何とかで、神王が私を迎えに来た。

 声が聞こえて、そのまま気を失って。気がつくと、緑が茂り、二つの月と一つの太陽が輝く世界にいた。


 身体は若返っていて、宙に浮いていて。

 あぁ、ここがこれから私が見守る世界なのかと、何故かすんなりと理解できた。


 それから、いろいろな子を受け入れて、送り出して。

 たまに遊びに来るハロスや他の神様たちとお茶会をしたり、私の世界の子たちも巻き込んで遊んだり、生身の身体で生きていた頃とはまた違った日々を送っている。


「なぁ、満足なのか?」


 満足なのかと問われれば微妙な気がする。

 当初の目標は、生きていく間に形を変えていて。でも、今はこの世界に来たみんなが心の傷を癒して、また再びどこかの世界で生きているかと思うとなんだか嬉しい。


 聖女だとか、転生者だとか、冒険者だとかそんな話じゃなくて。

 物理的とか、感覚的とか、精神的とかでもなくて。


 望んでたことではないから満足かは正直自分でもわからないところだけれど。

 けれど。





「今も昔も、なんだかんだでたのしいよ。ハロス」

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