初めての世界
柔らかな室内の光に包まれて、私は生まれた。
これでもう、彼等には死ぬまで会うことはない。……あ、ハロス以外ね。
どうやら目はまだあまり見えないらしく、明暗しかわからない。なんだか凄くもどかしく感じる。
早くお父さんとお母さんの顔が見たい。今まで、神様達を見れていた分、そんな欲求が大きい。
自分の意思とは関係なく泣き声を上げてしまう。なんだか、身体が思うようにいかないからなんだか変な感じがする……
というか、恥ずかしい!精神年齢が身体よりも高いから、かなり恥ずかしい。
泣きたくないのに泣いちゃう……。
すると、私の身体を誰かが抱き上げて何かを言っている。何を言っているんだろう?
耳を澄ませると、何を言っているかわかった。
まさかの英語を話していましたよ。
……そういえば、あのゲーム出した会社って海外の会社だったなぁ。もしかして、だから海外の会社だったのか⁉︎
と、とにかく、この世界の公用語は英語なんですか、さいですか。
私、自慢じゃないけど英語のテストとか赤点しか取ったことないんだよなぁ。どうしよう。
まぁ、喋れない方が違和感ないだろうし、いっか。うん!これから頑張ればいいよね!!
にしても、すっごく眠い。何でだろ……。
もしかして泣いたことによって体力が尽きたのかな?何にしても、もう、無理……。
と、まぁ、起きては寝てを繰り返して早10ヶ月。
どうやら、睡魔の正体は体力切れだったことが判明した。
今はハイハイも出来るようになってつかまり立ちの練習中。これが意外に難しい。
立てたと思っても直ぐに転んでしまう。多分、体幹がまだまだ弱いんだと思う。
でも、10ヶ月生活して、最初は10だった体力も上がって今はもう少しで50に到達しそう。
やっぱり、覚悟はしていたけど、産まれる前よりも明らかに成長速度が遅い。産まれる前なら今頃9999でカンストしてるんだろうなぁ……としみじみ思ってしまう。
懐かしんだところで何にもならないんだから、集中集中っと。自分に言い聞かせて再び、つかまり立ちの練習に入る。
背後ではお父さんとお母さんが私を応援している。
そうそう、目が見えるようになって知ったのは、私の両親がくっっっっっっっっそ美形だったこと。
そりゃ、ゲーム内のミーナも美少女だった訳だわ。
お母さんは綺麗なブロンドの緩くウェーブした長髪に深い蒼色のぱっちり二重。
お父さんは銀髪のストレートを低い位置で1つにまとめていて、目は薄い藍色。
そんな2人の遺伝子をこれでもかと受け継いだ私は現段階で既に美少女ならぬ美幼女……でもないな、美赤子??って感じです。
緩くウェーブした銀髪に薄い蒼色の瞳。しかも綺麗な二重です。
そして何より驚いたのが、この家が侯爵の位を持っていた事。
そんな情報、裏設定集にも載ってなかったわ!7歳で聖女の才を見出され、教会で生活していたって情報しか知らなかったわ!
閑話休題。
ミーナ、というか私は7歳で聖女の才を見出されるのだ。
だから、7歳までにある程度のことは出来なければならない。
ステータスを隠蔽する為のスキルはあるけど、それを破るスキルがないとも限らない。いや、きっとある。
だから、仮にステータスがバレた時の為に、教会から逃れて協会に逃げられる程度の実力が欲しい。
未来を変える手っ取り早い手段は私が聖女にならないことだ。でも、ステータスには聖女の適性があるってなってるから、そこは避けられない。
じゃあどうするか?簡単だ。聖女になっても、聖女として活動しなければいい。
その為には協会への加入が必要不可欠だ。
今更なようだけど、教会と協会は別物だ。
教会は聖職者、それこそ聖女だったり何だったりを育てる為の閉鎖された機関のこと。幼い頃から入る人が大半を占めるからか、常識に欠ける人が多い。勿論、ゲームのミーナにも常識はなかった。
協会は冒険者の統率、管理などを行う国営の機関のこと。教会に入る年齢制限がないのに比べ、協会は8歳以上と決められている。
教会と協会。ややこしいから、チャーチとギルドと呼び分けるのが普通だ……教会の人間以外。
とにかく、私は聖女適性がバレたら、1年間チャーチから逃げなければならない。
その為にも、今から出来ることは、急がなければならない。
まずは、自力で1日中歩き回れる体力をつけること。それが当面の目標だ。
だから、だから……早くつかまり立ちを終えたいです!!
お父さん!お母さん!そんなにのほほんと応援しないで!!
休憩させようとしないでください!お願いします!!
未来の私の為にも、お願いですからー!!
蒼色というのはざっくり言うと青っぽい緑色のことです!なので、緑系統の色に分類されます!!
読んで下さって有難うございます!!本当に感謝です!!