問題点。
さて、これから私は最悪の場合を想定して、2、3日の間に妹に会わなければならない。
ただし、大きな問題がある。この場所に着くまでに数日どころか1週間以上かかったという問題だ。これを解決しなければどうにもならない。
「どうしたものか……」
「何を悩んでいるのですか?ミーナ」
目の前に、それも数cmしか離れていない場所に突如現れた顔に驚きを隠せずに身体が強張る。しかも、押し倒されて上に乗られたのだ。そうなるしかないだろう。
いくら慣れた相手とはいえ、突然現れるのは心臓に悪い。いくらそう言っても、彼は首を傾げるだけだ。
だから、私も諦めている。
というか、彼に限らず「神」と名の付く者たちは大抵がそこら辺を理解してくれない。
人間の感覚を最も理解しているのは、恐らくハロスだろう。……いや、あいつは俗世に浸り過ぎか?
「ミーナ、何を考えているのですか?」
「あんたら神様のこと。とりあえず私の上から降りて」
そう告げると彼、八咫霧は渋々といったように私の上から退いてくれた。
関係のない方向へ逸れかけていた思考を引き戻して、八咫霧と向かい合う形を取る。
私はベッドに腰掛け、八咫霧は床に正座をしている。外見で言うと、私の方が若く見えるため、奇妙な光景……ってわけでもない。この世界ならば。
「とりあえず、ハロスを呼んできてもらえる?」
そう頼むとあからさまに嫌な顔をされる。
この2人はまさに犬猿の仲。そうなっている理由はわからないけれど、どちらかといえば八咫霧が噛みつきに行ってハロスがのせられる感じ。
「そんな顔しないで、行って?」
「わかりました。そのかわり後でご褒美をくださいね、ミーナ。手紙を届けたご褒美も含めて」
「わかった、良いよ」
「では!そ
「添い寝とか、一緒にお風呂とか意外で。物質を要求して」
「なら、
「もちろん私も駄目だから」
いつも通りのやり取りをしてから、八咫霧が要求したのは実践で使うこと。
最初に挙げてくる要求を抜けば、やっぱり武器なのだなと実感する。それならば、と許可をすると、ジェッドのおっさんの奥さんから貰った鎧を飲み込んだ。
「は!?ちょっと何やってんの!?」
「ミーナには私以外は必要ないでしょう?」
何そのヤンデレっぽいセリフ!?いや、せめて「私以外」と「は」の間に「の武器や防具」って入れよう!?「私以外の武器や防具は必要ない」の方がまだマシだから!!
こんな風に、ヤンデレの彼氏持ちの擬似体験したくなかったです!……心なしか笑顔も怖いし。
というか、せっかく頂いたものなのに!!ものすごく高級品だったのに!買うとすれば例えAランクの冒険者ですら買うのが難しい物なのに……
それを、いとも容易く、跡形もなく飲み込むだなんて……
どうお詫びすればいいんですか!?
「あーもうとにかく!ハロスを連れてきて!!」
「………………はい」
悩んだって仕方がない。諦めよう。
さて、ハロスを呼びにいかせて本来の悩み事に戻るとする。
「……と、言うわけなんですよ」
「……お前それ好きだな」
「違います。疲れただけです。ちゃんと話すと、最低で後2、3日で私、神になるそうです」
「はぁぁぁ!?!?!?おまっ、は、え、はぁ!?!?」
おぉー、いいリアクションだね。
「だから、それまでにチャーチ戻って妹救いたいんだよね」
「待て待て待て。追いつけないんだが……?」
もう、仕方がないなぁ。
丁寧にこのほんの2時間弱の間に起こった出来事を伝えた。
よくよく考えると、内容が濃かっただけでそれほど時間が経っていなかった。気分的には半日以上時間が過ぎてる気がするのに……
「アイツが来てたのはそれか……」
説明し終わると、頭を抱え出した。
どうやらアルヴァンティヌスはハロスの元にも顔を出していたみたい。それほど頭を抱えると言うことは何か面倒なちょっかいでもかけられたのだろう。
聞かないでおこう。
「と言う訳で、いつ神認定されるのかがわかんないんだよね。早くて2、3日後、長くて死んだ後、とかかな?その前にやりたいからさ」
「であれば、送るよ」
「うぇっ!?」
何処から出てきたんですか、魔王様!?
気配ください!!ドア開いた音しなかったんですけど!?
話を聞くと、ドラゴンで私たちを送ってくれると言う。
転移紋というものがあるらしいのだが、私の首輪に跳ね返される可能性が高いのだそう。そうなると、壊れる可能性が無きにしも非ず。
だから、スキルと判断されないドラゴン輸送となる。
その方法が最も早くたどり着ける方法みたいだから、ドラゴンを貸して頂くとする。
ただ、それでも半日はかかるらしい。それに、ドラゴンは目立つため夜中に敢行することになった。
そうすれば、明日の朝方までには街に帰れそうだ。
さて、かなりキツキツの予定が立った。
てきぱきと、急いで行動しなければならない。今までみたいにその場凌ぎを繰り返す訳にはいかない。
気を引き締めて行こう。チャーチの最深部へ。




