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聖女は物理特化の冒険者を目指す。  作者: 玄峰 峡。
教会 –チャーチ–
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広場と手紙

 小さな妖精ちゃんに連れられ広場に連れてこられたはいいものの、かなりのハイスピードで案内されたため、息が切れている。

 誰だよ今から練習とか言ったやつ……って、私か。


 そんな私を見かねてか、ハロスがため息をこぼして提案を持ちかけてくれた。


「だから嫌だったのに。全部終わったら、魔王城なんなりどっかしばらく滞在するようなとこに行ったら相手してやっから」


 そして、それに乗らざるを得ない私。

 だって、よくよく考えればバカだもん。昼からの出発とはいえ、午前中に体力使うとか。午後の集中力や体力切れに繋がるじゃん。


「ここはもういいのー?」


 あ……

 しょぼんとしてしまった。せっかく案内してくれたのに、なんだか申し訳ない。何か案はないだろうか……

 そうだ!!


「ねぇ、ここが広場なんだよね?ここでお祭りをやったりとかするの?」


 私の考えた案。それは、この場所に関する質問をして気を紛らわせること!

 そんなことでどうにかなるか、と思われても仕方がない。でも、今の私にはこれしか思いつかない。


「おまつりあるのよ!!おどったり、うたったり、たのしいのよー!」


「あなたはそのお祭りの歌を歌ったり踊ったりできるの?」


「ずっとみてたからできるのよー!!みるのよ!!」


 なんとか気を紛らわせるというか、逸らすことに成功した。

 目の前で楽しそうに歌を歌って踊るインプちゃん。可愛い。悶絶するレベルで可愛い。


「あなたたちもやるのー!」


「「……え!?」」


 急にこちらに振られて、ハロスともども驚きを隠せない。

 だって、可愛いなぁ、綺麗だなぁって眺めていたのに、急に一緒に踊ろ?って言われて驚かない人が何処にいますか。無茶振りもいいところです。


「だいじょーぶ、ちゃんとおしえるのー!」


 いやいやいや、そういう問題じゃないんですけど!?


 ……まぁ、もともと私が広場に案内してもらって結局使わないという所業をしたのだからここで拒否権はない。

 というか、こんな楽しそうにしてる子をまた泣かそうだなんてそんなことできるはずがない。


 という訳で、ダンスを教えてもらうことになった。

 正直に言おう、難しい。何故か、理由はとても簡単。


「流石に人間は空中で優雅に5回転出来ないよ……」


「俺様は出来るぞ」


「お前はな!!」


「できないの……??」


 いや、泣きそうになられても、できないモノはできないんです……

 首輪のお陰で自分で浮くことはおろかハロスに浮かせてもらうことすらできない。ちなみにハロスは普通に浮いている。

 どうしよう……一体どうすれば……


「おい、取り込み中悪いな。ちんまいの、神子さんを借りれるか?」


「ちんまくないの!!ちんまいいっちゃだめなの!おねーちゃんつれてっちゃやーの!!」


 突然現れたインプのお兄さん、というか渋めのおじ様。もちろん、昨日部屋に案内して、今朝挨拶を交わした方。

 いったい何処から現れたのかわからない。ここは広場という名の通り、開けていて隠れられそうなところは何処にもない。


「入口の男が中に知り合いがいると煩いんだ。来てくれ」


 はぁ……

 って、まさか勇者じゃないよね??勇者だったら最悪なんだけど。


 とにかく来い、と腕を引かれて歩いていく。後ろからまつのー!!という声が聞こえてくるからおそらくついてきているだろう、だとするならばバロスも来ているな。


 何はともあれ、とにかくあって見ないことには絶望のしようもないし、腕を引かれるまま歩いていく。

 最初は駆け足レベルで進んでいたけれど、途中で気がついてくれて進むペースを落としてくれた。

 普段から飛んでいる人たち?からすると歩く人のペースは遅いんだろうな。

 インプちゃんといい彼といい、移動するペースがかなり早かったから。


 って、あれ?今更気がついたけれど、よくよく考えると2人以外に会ってなくない?

 家っぽいのはたくさんあるのに……どういうこと??


「ああ、妖精は基本的に警戒心が強うからな。なかなか姿を見せん。ちんまいのは好奇心だろうし、自分はまぁ長だからな、もてなすという仕事が……」


 何故か遠い目をしだした。

 多分、いろいろあるんだろうな、面倒ごとを押し付けられるだとか、そんなようなことが。

 長も大変なんだなぁ……


「ともかく、全員の姿を見たいのなら後2、3日はいることだ。まぁ、あいつの娘を叱りにいくってんならそんな時間はないだろうがな

 ……っと、あいつだ」


 そんな話をしながら歩いていると早くも昨日通った入口へと辿り着く。

 そこには、何か透明な壁に阻まれている美青年がいた。口を動かしてはいるが、壁に阻まれて何を言っているのかはわからない。


「お前か……八咫霧」


「知り合いってことでいいか?」


「はい。入れてください」


 そう告げると何かを小さく唱え、じゃあな、と消えていった。

 礼を告げる前に姿を消され、それでも聞こえるかもしれないと礼を言おうとしたが八咫霧が抱きついてきたが為に言えなかった。


「ミーナ、手紙を預かってきました」


 とりあえず、そう言って差し出された手紙を受け取って開く。

 そこにはたった一文だけが書かれていた。


『絶対に嫌だ。』


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