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聖女は物理特化の冒険者を目指す。  作者: 玄峰 峡。
教会 –チャーチ–
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嫌な再会

 3人で森の中を歩いて行く。

 もちろん、整えられた道なんてものはなく、獣道。しかも、途中からその獣道すらなくなり、道なき道を切り開いて進んでいる状態。


 時折、魔物が襲ってきたり、休憩のために腰掛けた切り株が実は魔物の擬態でしたなんてこともしばしば。

 そんな感じで進み続け、日が沈み切りそうな頃にすこし開けた場所にたどり着いた。


「今日はこの辺りで休もう」


 おじさんのその言葉で私たちは泉のそばに簡易的な寝床を作った。

 この世界に、寝袋なんてものは存在しない。恐らく、敵に襲われたときに身動きが取りづらいからだと思う。だから、近くにあった岩の小さな窪みに、枝を集めてクッションを、大きな葉を布団がわりにした。


「私とハロスさんで見張りは交代でいいですか?」


「あぁ。構わない」


「待って、私は??」


 2人だけで見張を交代すると聞いて動揺を隠せなかった。慌てて尋ねると、うまく言いくるめられて、結局見張りに参加できなかった。

 2人だけに任せるのは申し訳ないからやりたいのに……


 私が言い負かせるだけの実力がなかったってことだから今回は諦める。

 しかし、次ば絶対にやってやる。語彙力を増やす……のはこの状態じゃ難しいから、今ある知識だけで色んな反論をシュミレートしておこう。

 そして明日は絶対に参加する!!


「なんか、面倒な予感が……」


 ハロス、しっかり聞こえているからね。明日は覚悟しろ!!


 少し不貞腐れはしたが、疲れが溜まっていたのか横になるとすぐに眠気が襲ってくる。

 きっと、私を心配して見張りから外してくれたのかと考えると同時に、自分の疲れに気がつけていなかったことが悔やまれる。

 でも、もう無理。落ちる……




 しばらくして目が覚めると、あたりはまだ暗かった。目を凝らすと月明かりに慣れて見えてくる。

 隣で寝ていたおじさんを起こさないように、ハロスの背中に近づく。


「ねぇ、ありがとね」


「何が」


「色々」


 小さな声で会話をして、彼の隣に腰掛ける。

 彼には色々お世話になっている。今言うべきことじゃないかもしれないけれど、なんとなく言いたくなってお礼を言う。


 泉に月の光が反射して幻想的にキラキラと輝く。

 その水面を眺めながら、会話をしないまま時間は過ぎる。ハロスとは会話をしなくても苦ではない。他の人とは無言が続くと少しいたたまれなくなるのに。何故かハロスだけは平気。もう何年も一緒にいたからかな?家族以上に一番付き合いが長いしね。


 ガサリ


 遠くで茂みの揺れる音がした。

 でも、今夜は風もないから何かが揺らしたとしか考えられない。では一体何が……


 ハロスと私の間に緊張が走る。

 茂みのガサガサと揺れる音は段々とこちらに近づいてきている。息を詰めて音のする方を見据える。もちろん、万が一に備えて他の方向へも感覚を向ける。


 来る!

 そう思って目の前を睨みつけると、そこに居たのは魔物や山賊といった存在ではなかった。

 いや、むしろそれよりも厄介な存在。


「久しぶりだね!ミーナ!!」


 そこには、カイルがいた。

 しかも格好は、ゲームでの初期装備と同じ。それが何を指すのか、簡単だ。


「神に認められた勇者である俺が守ってやる!!」


 やっぱり勇者認定食らってたかー。

 というか、何故ここに!?


 話を聞くと、チャーチの人に話を聞いて私が心配になり追いかけようとして、それを止められたところ剣を構えた。それに反応したチャーチ職員が慌てて『天命の儀』を行ったらしい。


 あれ?天命の儀って確か私が神子認定されたやつだっけ??確かそんな名前だった気が……

 私、その時、台座を壊した記憶もあるのですが……

 いつの間に直していたんだろう。全然知らなかった。むしろ忘れ去ってた。


 というか、一緒に付いてくる気だよね、コレ。すっごく面倒なんだけど……

 私を守るって息巻いているのがぶっちゃけ熱苦しくてたまらない。そして何より声が大きい。


 さっきから静かにしてっていっているのに、一向に声量を落とさない。そんな風にしていたら魔物たちが寄ってくるでしょうが!!


「って、やっぱりぃ……」


 大きい魔物がいないだけマシだが、数匹の魔物が現れた。

 それに気づかず、カイルはいかに自分が強いかを力説している。そんなに自分に夢中で周りの敵に気が付かないなら勇者なんて辞めちまえ!!


 一匹の魔物、多分ウサギ。それがカイルを襲う。

 押し倒されてから、魔物が周りに集まっていることに気がついたのか慌て始めるカイル。慌てて立ち上がると、私の前に背を向けて立った。


「俺に任せて逃げろ!!」


「……」


 そうは言われたものの、正直言って邪魔である。

 目の前に立たれているため、邪魔である。私の身長はそれほど高いわけでもないから、この世界で高身長に分類されるであろう彼に目の前に立たれると視界が狭まる。

 だから、避けるのだか、その度に私の目の前に来る。


 物音で目を覚まして出てきたおじさんに、何やってるの君らと怪訝な目で見られる程には変な光景。

 いや、好きでやっているわけじゃないんです。そんな目で見ないでください!!

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