戦乙女の買い物
日が傾き始めた頃、やっと満足出来る直しが出来たと奥さんが出てきた。
それまで何をしていたかというと、ひたすらに店内を見ていた。そして買い物もした。お金?そんなの持っているはずがないじゃないですか。という訳でハロスに払わせました。
何を買ったかというと、ハロスは例のローブの様なコートと旅路で着る服を買った。綺麗なまでに全て黒。黒ばっかり。黒すぎる。前世ならその黒い長髪も相まって厨二病と一言で片付けられそうだ。
私は奥さんが治してくれている防具を受け取ることになるだろうからその下に着る服。面倒になって適当に選んでいたら綺麗に白しかなかった。
いや、おかしくない??私、もっとカラーバリエーションのあるものを選んでいたつもりなんけど……。確かに部分部分に色は入っている。しかし、ぱっと見白だ。
ハロスと合わせたら白黒コンビだ。
痛い。前世ならかなり痛い。それに、これから旅のはずなのになぜ白を選んだんだ私。汚れるだろ。何故だ。
それに気がついた時にはハロスが既にお金を払い終わっていた。一足遅かった……。
「こんな感じでどうかしら?」
持ってきてもらえた防具を改めて見ると、胸当て部分が薄いプレートでできていて、胴回りは革でできている。それに加えて、籠手と脛当てもある。
受け取るとかなり軽い。心配になるレベルで軽い。そんな想いが顔に出ていたのか、大丈夫だと声をかけられた。
「このプレートは軽いけど丈夫よ。なんて言ったってトゥウトルット天銀なんだから。それに革だってゼストルハーピーの革を使っているのよ?」
はい?
ゼストルハーピーっていうのはわかりますよ?あの、かなりヤバめの魔物ですよね?しかも、目撃率がかなり低いという、もはや見れたら幸運が訪れるとか言われているけれど実際に遭遇したら逃げること推奨のあの魔物ですよね?
なんでそんなレアモノを持っているんですか!?
というか、
「とぅ、とぅうとなんとか?って一体何??」
「スカイドラゴンって言うヤツの鱗。お前の前居た世界で言うと、いわゆるミスリル?」
「ミスリル!?」
「どうしたの?」
「いや、なんでもないです!!」
ミスリルってあのミスリル!?
ファンタジーもので金属の最高ランクとされるあのミスリルですよね?あの、ファンタジーもので最高級金属といえば、もちのろんでこれでしょ!とされるアレですよね?まさか金属ではなくて鱗だったとは思いもしなかった。
それをこんな風に使うとか……
ていうか、ゲームではミスリル表記だったし、尚且つボス戦の手前くらいまで行かないと購入出来ないモノだったはず……
え、こんな近場に、いわゆる最初の街で購入出来て良いんですか……
「え、あの、お金は……」
「良いわよ、そんなの。私のお下がりだし。それに、神子様なら悪用しないって信じてるもの」
「え。あ、ありがとうございます」
表面上は出していないけれど内心かなりテンパっています!
だって、ミスリルの防具をタダでくれるって言っているわけだよ!?慌てない方がおかしいよね!?
というからミスリルだけに注目していだけれど、革部分はゼストルハーピーだよ!?炎と感電耐性があり、更に言えば伸縮性抜群の耐久力も数十年は軽く保つとされる革素材としては一級品のりしかも、装飾も華美過ぎないけれど洗礼された上品さとでもいうべき感じがする。
これ、実際に買うとしたら一体いくらかかるんだろう……
「あの、さすがにここまで高価なモノを頂くわけには……何かお礼くらいはしたいです」
そう伝えると、本当に何も要らないのに、と言いつつも考えてくれた。奥さん良い人。これで何もせずにもらったら申し訳なさで潰れそう……
「じゃあ、これからはこの店以外を使わないで頂戴?」
「それだけでいいんですか?」
「大丈夫よ。白の戦乙女さんの御用達ってだけで私たちにとってはステータスよ」
「白のヴァルキリー?」
「あら、自分の通り名も知らないの?夜な夜な、魔物の群れに一人武器も持たずに飛び込み、自らの纏う白い服を一切汚さずに場を制する。だから白の戦乙女」
いや、何それ。知らないんですけど。
助けを求める様にハロスに、視線をやると逸らされた。しかし、そのまま見続けると気まずそうに口を開いて一言だけ言った。
「……ギルドランクA到達おめでとう」
「はぁ!?!?」
いや、意味わからないから。
そう思って問い詰めると、どうやら私のギルドの一員としてのランクはまだ存在しているらしい。そして、今までハロスから貰っていた魔物討伐は時空の歪みがありそうな場所に関してだけだったけれど、同時に高ランク向けのクエストでもあったらしい。そして、たまにやっていたおっさんやハロスとの対人戦の稽古はこっそり昇格試験も兼ねていたらしい。
いや、意味変わらな過ぎてフリーズするわ。
私、知らないうちにそんな大層な通り名ついてたのか。更に、ギルドの中では白の戦乙女=私という式が囁かれているらしい。そしてそれをチャーチは認めていない、と。
というか、私丸腰で挑んだことなんて一回もないし、もはや八咫霧に全任せの勢いで、って、八咫霧が黒いから闇とどうかしてたのか……
盲点だったわ。




