強制参加
おじさんが準備を終えてさあ行こう、としているところにドアベルが鳴る。うん、嫌な予感しかしないね!!
よく聞くと、教会の者ですが……、と声が聞こえる。やっぱりそうだったか……
って、どうしよう!?
私がここにいることがバレたらまずいよね!?何も説明せず飛び出してきている訳だし、ここにいることがバレたらどんなことを言われるかわかったもんじゃないよ。
とにかく、隠れなくては!!
とは言っても、どこにも隠れる場所はない。仕方なく、超古典期な方法を取る。そう、扉の影になるところに身を寄せる。
急に慌てだして、側からみれば変なことをしだした私をみて、バロスも慌て出す。ハロスも慌てた結果、窓から外に飛び出した。
ずるい。私もそうすればよかった。
そうこうしていると、急に扉が開かれた。
一気に目の前に扉が入ってきて正直かなり怖かった。しかし、そんなことを気にしている場合ではない。
「失礼します、こちらにライアーナのお父様がいらっしゃるとお聞きして参りました」
「勝手に入ってくるんじゃないよ」
メル婆が怒っている。メル婆が扉を開けて対応してくれていたのだが、どうやら簡易的な自己紹介をしたあとに、許可を取らずに入ってきたらしい。
それは怒るわ。
「どうしたんですか?私は今忙しいのですが??」
丁寧な口調ではあるけれど怒りを感じる。ぶっちゃけ怖い。どうして私の周りには怖い人ばかりいるんだ……
「実は、ライアーナが教会から逃げ出したのです。何か知っているのではないかと伺いました」
「えぇ、それなら知っていますよ」
おじさん!?何言ってるんですか!?一体どうするおつもりで!?
何故即答する!?せめて悩んでください!そしてそんなキラキラないかにも怒ってますの笑顔で答えないでください!!
「だから、今からあの馬鹿のところに行きます」
「でしたら教会の方からも人をつけます」
「それは結構です」
そう告げると、私の隠れる扉の影に近づいて来る。
え、まさかと思いますがそんな筈ないですよね?ないですよね??
そう祈ってみたものの、容赦なく引っ張り出された。無情だ。
「ミーナちゃんがついてきてくれるそうなので大丈夫です」
「いや、そんな話一切してませ……
「それに、君がきてくれればあの男の人も来てくれるだろう?彼は強そうだからね」
ハロス目的ですか、そうですか。
いや、行くのは別に良い。ただ、チャーチが許してくれるはずがないだろう。その点はどうするんですか?
って、泣いてる!?
いや、どこに泣く要素あったんだ!?意味がわからない。情緒不安定なんですか!?
「神子様は友人想いなのですね。友人の為に周りの生死を振り切り、安全な教会を飛び出し、更にか弱いのにも関わらず覚悟を決めて身を投じる姿、流石です。更に更に……」
なんか語りだした。
なんか語りだしたから、聞かないことにしよう。ハロスも、もう良いやとなったのか窓から部屋の中に入ってきた。
そして全員して「か弱い」の箇所で吹き出した。もちろん私も含めてその場にいた全員が。
いや、私がか弱いとかあり得ないわ。
自分で言うのもなんだけど、多分同い年の女子の平均よりは強いと思う。実はコッソリバレないようにハロスから仕事もらっていたり、おっさんに魔物の多い場所教わって行ってたりとかするしね。ライアーナが誤魔化してくれたりしていたから、そんなにバレなかったし。
「で、君もついてきてくれますか?」
「いや、俺様は……行きます。行かせていただきます」
あ、おじさんの笑顔に負けた。ハロスが笑顔に負けた。
来てくれるのは心強いけれど、一つ疑問なことがある。それを聞きたくて、裾を引いてしゃがんでもらう。
「出来るの?前、干渉出来ないとかなんとか言ってたじゃん」
「人の生死に直に関わることは無理だけど、例えば死なない人を死なないように強化したりとかは出来る、と思う」
思うなのかよ。
でも、だとしたらかなり微妙だよ??間違ってたらやばくない?神様やめることになったりとかしない??
まぁ、ハロスが行くって言ったから大丈夫なのかな?
「で、この人はどうするのが正解なんだい?」
「あ……」
メル婆に質問されて再びチャーチの人に目を向けるとまだ語っている。そんなに語ることがあるのが凄いな。
ハロスと顔を見合わせて、口を揃えて答える。
「「放置で結構です」」
「じゃあ、行こうか。あの馬鹿のところに」
だけどその前に準備をしにチャーチに戻らなくてはならない。
だけど、戻りたくない。絶対また面倒なことになる。
「服どうしよう」
「そういえばお前、まだ寝巻きか」
「戻りたくない」
「だったら、うちの隣の店に行ってみな。安くしてくれるだろうしね」
いや、でもメル婆の言う隣の店って冒険者の間では割と有名な店だよね?性能良いし、着心地もいいからって話題だよね?だから、割と高いって話だよね。
行けばわかるって言われてもわからないんですけど……
とりあえず、行けばいいのかな?よくわかんないけど、安く良いものが手に入るなら嬉しいことはないし、行ってみますか!!




