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聖女は物理特化の冒険者を目指す。  作者: 玄峰 峡。
教会 –チャーチ–
32/60

八咫霧さんの正体

 元からすごかった八咫霧さんが更にすごくなったのはわかった。だけど、まだ決闘中だからとりあえず、


「行きます!」


 八咫霧さんを霞、いわゆる腰の位置あたりに構えて距離を詰める。

 といっても、足は大して速くもないから容易に体制を整えられる。


「ったぁ!!」


 突いたら横に避けらて背後を取られる。振り向くと剣が迫っていて慌てて慌てて刎ねあげる。

 でも、さっきの重さからしたら押し切られるから後ろに飛び下がっ……


「って、うぇっ!?」


 八咫霧さーん!?!?!?マジですか!?ルートさんを跳ね飛ばしましたよ!?

 いやいや、それはやばすぎますよ。ようは身体強化機能まで搭載したってことでしょ??もはや国宝になって良い、というより伝説になっても過言ではないほどのチート武器になってる。

 色々な人に狙われる系の武器じゃん。怖すぎでしょ。敵が持ってたら死を悟ってたわ。

 うん、八咫霧さんが私の子で良かったわ。


 接近戦はもう無理だと察したのか、今度は魔法系統のスキルを仕掛けてくる。

 いくら八咫霧さんといっても流石にこれは無理。でも、こちらには何を隠そうハロスがくれた首輪があるのだ!


 首輪の効果で炎が消される。

 コレが自分のスキルを封印するだけではなくて外部からの直に危害を加えるスキルも消すというのは驚いたけど、確かにそうでもしなくちゃ機能的にはダメだよね。だってほら、外部のスキルを規制しなかったら首輪に当たってパリンだからね。

 もともとは奴隷用のものだから当然の機能。


 それがまさかこういった形で役立つとはね!!


 至近距離からの物理攻撃では八咫霧さんが、スキルでの攻撃ではこの首輪が。もはやチート武器すぎでやばいしか言えないわ。


「それじゃあ、行きます!!」


 もう私に怖いものはない!!

 襲ってくる炎を(首輪の効果で)ものともせず、(八咫霧さんの効果で)殺傷能力倍増したこの腕で刀を振るう。

 ルートさんの首に触れようとしたそのとき……


「止め!!」


 メル婆の一声でピタリと止める。もちろん、遠心力があるから止められたのは八咫霧さんのおかげ。

 薄皮1枚を切ってしまい、うっすらと血が滲む。


「勝者、ミーナ!!」


 巻きあがる歓声。ギルドの仲間たちが駆け寄って背中を叩く。

 メル婆に、いくらなんでもやり過ぎだと怒られたけれど、もともと寸止めにするつもりではいた。ルートさんが急に少し身動きしたのが悪いんだもん。


「あの、ありがとうございました。大丈夫ですか?」


「……も…」


「はい?」


「バケモノが!!俺は認めないからな!」


 うっわ。ありがちな捨てゼリフだな……

 そう言って走り去る彼の後ろ姿を全員で眺める。なんだか腰が抜けたような走り方をしていて格好悪い。


 後から聞いたら、ルートさんは入ったばかりだけれど彼の親がうるさくて渋々Eランクからのスタートにしたそう。それでも、何もせずにぽんっとやるわけにはいかない。だから、一応は試験をしたらしい。


 まぁ、そんなわけでギルドから一目置かれていると思い込んでいたときに、自分よりも幼くてしかもランクも上の小娘が現れたわけだ。

 そりゃあムカつくわな。


「んで、ミーナはなんで来たんだ?まさか、チャーチから追い出しを喰らっ」


「ってないから。神様からのお告げというパワーワードで自由時間貰ってきただけ」


「なんだ。つまんねぇな」


 あの、ハロスさん?数日会わない間にまた口調が変わりました?

 でも、なんていうんだろ。ちょっと荒めの口調の方が外見に似合う。ちょっと優しめの、下手をすればオネェ口調になることもあったあの感じは外見とのミスマッチ感が有ったんだよな、個人的に。


「今の口調の方が好き」


「あ?あー、他の世界に行ったときに移った」


「マジか」


「おう。てか、もともとの口調に戻ったって感じか?あの口調はアルヴァンティヌスとかディスティアとかとのゲームに負けた罰ゲームが居座ってただけだし。まぁ、それは置いといて、なんだ」


 マジか。その口調の方が素に近いのか。優しめの口調の方をずっと聞いてたからそっちが素だと思い込んでたわ。

 というか、神様がやるゲームが純粋に気になる。

 って、そんな話じゃなくて。


「んっとね、挨拶に来たのと、手合わせ、はもういいや。あと、おっさんからの情報んところに行きたいのと、あとはアドバイス?貰いたくって」


「ジェッドの奴の情報?ってどこだ?」


 あ、そういえば言ってなかったっけ。

 あのときとあの後、色々あり過ぎてすっかり忘れてた。とりあえず、おっさんからの情報を説明する。

 あとは今日までの愚痴もこぼす。


「んじゃ、アドバイスってのはその祈りだとか舞だとかのってことだろ?だったらもうかぐりゃだっけ?あ、カグラか。アレにすればよくね。アレにすりゃ1回で済むだろ」


「いや、踊り方とか曲調とかよく知らないし」


 そんな話をしていると、ネックレスと化していた八咫霧さんが突如暴れ出した。そして、私の中に入っていった。

 って、私の中に入っていった!?嘘!?どうしよう!?


 そんな風に慌てていたら体が勝手に動き出した。

 しかも心なしか神楽の動きのような……


「まさか八咫霧さん、私を操って神楽を踊る、と?」


 確認をすると、私の右手の親指が立った。マジか。

 八咫霧さんってナニモノな訳?もともとは私の前世で愛用というのもおかしいけれど、使っていた木刀だった訳だし。


 《コール。個体名・八咫霧は付喪神と思われます》


 付喪神!?初耳ですよ!?八咫霧さん!?!?!?


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