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世界の事情

『アルヴァンティヌスくーん、ディスティアだよーん。お久しぶりー♡』


 ……なんか変なの来た。気がする。こういう時は、【遠視】?


 うわ、目のやり場に困る。漫画とかアニメとかゲームとか、2次元でしか有り得ないようなぼボンキュッボンだわ。羨ましい…って、そういえばゲームのミーナ・アリエスもそうだったわ。私もあんな動きずらそうな身体に育つのかなぁ。嫌だなぁ……。


『こんにちは、蒼井 雪だった魂さん♡』


『こんにちは。随分と発達の良い身体ですね』


 しまった。思わず考えたことをそのまま伝えてしまった。


『ミーナ・アリエスもそうなるわよ。知ってるでしょう?私の世界のお話はアナタの居た世界でゲームになって居たんだから♡』


『あ、それで思い出したんですけど、なんでゲーム世界が本当に存在してるんですか?いや、違うか……なんでこの世界がゲームとして私の世界にあったんですか?ディスティアさん』


 尋ねると、ディスティアさん(いや、ディスティア様の方が正しいのか?)は悲しそうに微笑んだ。


『本当は、魔王は死んじゃいけないの。魔王が死んだら、世界が魔物で溢れかえってしまう。私の世界はそういう風に出来ているの。でも、あのゲームになった事は事実として、もう何百回も繰り返されているの。

 だから私はそれをゲームや童話にして色んな世界にばら撒いた。いつか、この世界にその物語を知っている人が転生して欲しくて。そしてその人が世界を変えて欲しくて。

 だったら魔王の死なない物語をばら撒けば良いって思うでしょ?でもそれじゃあ広まらないもの。魔王が世界の平和を守っている物語なんて誰も読みたがらない。なら、繰り返されている事実を広めようと思った。

 なるべく転生した人が知っている確率を上げたかった』


 言葉を切った彼女は私をじっと見つめた。いや、実際に対面していないから、見つめられた気がした、と言った方が良いのかもしれないが。


『また魔王が死んだと思ったの。もうこの世界を終わらせようって思った。そんな時、時空の裂け目に魔法の一部が入って……アナタが死んだ。この世界を、ゲームの『英雄奇譚~勇者の奇跡~』を何度もプレイしてくれていたアナタが。アナタが来てくれれば、未来は変わる。そう思ったの。

 巻き込んでごめんなさい』


 疑問に思っていた事が全部腑に落ちた気がした。

 あのゲームのエンディングはハッピーエンドと言うには色彩が暗かった。それは、魔物で世界が溢れたことを暗示していた。


 いくらアルが異世界転生チケットの獲得倍率を上げたと言っても、そう簡単に得られる筈がない。さっきの口振りからすれば、私がいた世界やこの世界以外にも世界はある。その死者全員に得られるチャンスはあったのだ。ただ単に幸運というには出来すぎている。


 それに今回、私はミーナ・アリエスとして生きることになる。それならば、記憶を消した方が世界に都合が良い筈だ。あの物語が、本当ならば。あの物語で、世界が本当に救われるのならば。


『それで、私には何のメリットがあるんですか?』


『ある、って断言は出来ないわ』


『……良いですよ。魔王を死なせなきゃ良いんですよね?私に出来ることが何かはわからないけど、とりあえず私が聖女として勇者と会わなければシナリオはぶち壊せますよね?』


『え、えぇ、そうね。でも、アナタのメリットは何も……


『有りますよ。うまくいけば、寿命を全うして死ねますもん。私は、蒼井 雪としてやり残したことが沢山ある。でも、今回うまくいけば、やり切って死ねる。

 最初の目標がわかってるだけ楽ってもんですよ』


『でも……』


 すみません。そろそろ限界です。


『あーもう!うだうだうっせーなぁ!アンタは、世界を変えたいんだろ⁉︎それを私に頼みたいんだろ⁉︎ならはっきり言え!!対価は求めるけど、やれるだけのことはやってやるっつてんだよ!』


 あはは。ポカンとさせちゃった。それはそうだよね、急に半ギレしたんだし。


『あ、り…がと……』


 嘘、どうしよう⁉︎神様を泣かせちゃった。これって不敬罪になるかな……


『お願いします。未来を変えてください』


 そう言ってディスティアは芯の強い目をした。その目を私は受け止めて、答えた。


『仰せのままに、神様』


 こうして私と神様、ディスティア様との契約は結ばれた。


 私は、蒼井 雪としての前世で何度もプレイしたゲームの知識を利用する。あくまで、ミーナ・アリエスとしての人生の中で。


 私は、ミーナ・アリエスとして、ディスティア様の願いを叶える。それが、この世界の創造神・ディスティアの声を聴ける、【神の神託】というスキルを持った聖女(わたし)の役目でしょ?


 こんな事、転生者である私以外に出来る可能性のある人は居ない。だから何百回と繰り返されたんだろう?

 なら、終わらせてやろうじゃねぇの。せっかく異世界転生してやったんだ。ゲームのシナリオ通りに進めてやるかよ。


 私は、私だ。他の誰でもない。ゲームの、過去に繰り返された、ミーナ・アリエスの人生に縛られてたまるかよ。

 全力でシナリオ(聖女なんて役職)を回避してやる。


 それが私とこの神様、ディスティアとの契約だ。私は、ディスティア様に向かって、不敵に微笑んで見せた。


 《コール。スキル【遠視】、【念話】がLv.10になりました。》

 《コール。スキル【投影】を獲得しました。》

 《コール。称号【誓約者】、【異端者】を獲得しました。》




 ……あの、すっごく今更だけど、スキルや称号に関する更新、早すぎやしませんか?

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