天命の儀!!
やっぱり、なる可能性は低いって言われても、無いわけじゃないしそりゃあ緊張しますよね。
ガチガチに緊張してる。
ライアーナちゃんは、もちろん見てくれている。ただし、かなり離れたところでだけど。
それと、ハロスなんだけど……
『とっとと終わらせてー』
ハロスのことを考えていたら、耳元から声が聞こえた。
そう、彼は今ギルドの本部から視ている、らしい。そして、なぜか声が聞こえる。おかしい。スキルはこの首輪に阻まれているはずなのに。
……まぁ、神様だから何でも有りってことでしょうね。深く考えないことにします。
「前に出て、この魔法陣の中央に立つが良い」
長い長いお話が終わって、やっと名前が呼ばれる。
長すぎる。朝、日が昇る頃から始まった、天命の儀は、空に月が綺麗に輝く頃になってやっと終わりが見え出した。
前置きが長すぎる。エグいくらい長くて、辛かった。
しかも、寝そうになるたびにハロスが声をかけて起こしてくる。
何の拷問かって、真剣に考えました。それくらい辛かったです。
何も喋らずに魔法陣の中央に立ち、目を伏せる。
この儀式中は、何も喋ってはならないらしい。まったくもって意味がわからない。
私が立ったのを見て、周囲の人たちが呪文を唱え始める。
これは、神聖語の呪文で、神に祈りを届けて何たらかんたらって目的らしい。
だけどさ、神聖語って、日本語なんだよね。普通に聞き分けられるし、喋れるし、書ける。
まぁ、言ってしまえば日本語が日本語じゃないんだわ。
文法の意味がわから無くなっている。
例えば、「わらがぬしよ、かれのしゃのこんがしき、けんきゅうへ」的な。
多分、我らがの後に神か主が入ってる気がする。
でもって、かのもぬ、彼の者、とかかな?それで、たましいはそのまんまできのうは機能かな?でも、発音が昨日なんだよね……
と、まぁそんな感じで考えていくと、「我らが主よ、彼の者の魂が色、見せ給へ」って言いたいのかな?
だとしたら、うん。うん……。漢字にすれば合っているんだろうけど、音がね……
こんなんじゃダメだろうなぁ、言葉がなぁ……
と、思っていたのもつかの間、魔法陣が輝きだした。
うん、意味がわからんね。
アレかな?言葉よりも想い的な感じなのかな?言葉があってなくても、反応するよ、的な?ニュアンスが伝われば良いよ的な?
随分と適当だな!?
魔法陣が輝きだしたかと思えば、白い炎を上げ始めた。
怖い!めちゃくちゃ怖いよ!?
熱くはないんだけどさ?視覚的には熱いし、燃えそうで怖いよ!?
「って、あれ?」
終わった、のかな?
って、なんか皆さん焦ってませんか??一体何が……
「って、嘘でしょ!?」
足元の魔法陣が描いてあった台座?みたいな何かにヒビが入ってる。しかも、魔法陣は黒焦げの焼け跡みたいになってる。
一体何がどうしてこうなった!?
もしかして、これもこの首輪の所為!?
『あー。面倒で言ってなかったんだけど、スキルを封じるって言っても、それに魔力を使ってるんだよね、それ』
ん?と、言いますと??
『身につけてる人の魔力を使って、外部からのスキルを無理矢理消してて、それに魔力を使うから、身につけてる人も使えない、ってこと。要は、身につけてる人の魔力がデカければデカいほど周りのスキルを封じる力もデカくなる』
確か、私の魔力って9999でカンストしていた気が……
ということは、私の魔力が多過ぎた結果、魔法陣すら破壊したと。
いや、エグッ!?エグ過ぎでしょ!?何人もの人の魔力使ってやる儀式だったんだよね!?それを私1人の魔力で超えちゃうとか酷くない!?
物理特化を目指すだなんだ言ってたけど、スキルを受けたら過剰防衛しますよ、って流れになるわけだよね。
そんなの、物理特化になれないじゃん。最早、無理ゲーのボスレベルじゃん。
スキルに頼り切ったゲームで、スキルを使ったらやられるとか、最早勝ち目のない敵じゃん。
こんな敵が居たら嫌だよ。私なら絶対プレイしない。
『ほら、弁明しなね。ニシシシシー』
こいつ、完全に他人事だと思って楽しんでやがる。
というか、その笑い方久々に聞いたな。ハロスってなんか会う度にキャラが変わってる気がするし……
って、こんなのは後で考えてもいいや。とにかく今は、壊しちゃったわけだし弁明しなくちゃ。
「実は私のステータスに関するモノは女神様のお力によって見れないようになっているのです。
女神様は、私が4つの頃お告げを下さいました。来たるべき時まで一切のスキルを封じる、と。
ですから、もしかしたらそのお告げの際の御加護によってこのようになってしまったのかもしれません……」
そう!
チャーチの皆さんを黙らせて、なおかつ魔王への余計なヘイトを溜めない言い訳!それはズバリ!!
神様のせいにしちゃおう作戦!!
仮にチャーチがどす黒くなってたとしてもさ?一応は神様を信仰している場な訳だから、なんとかなるっしょ!という考え。
上手く、行くよね!!
「つまり、我らが女神様に選ばれた存在である、と……」
うんうん、いい感じいい感じ。いい感じに納得してくれてるね!
「神子様だ……」
はい?神子様?何ですかそれ。
《コール。職業が【神子】に確定しました。》
ちょっと神王様!?久々に出てきたと思ったら、何なんですか一体!?
周りも騒ついて、神子様コールが起こりだして、ってなんか予想外の方向に行ってるんですけど!?
あ、そうだ。
まぁ、そりゃあそうなるよね。って、笑いながら呟いたハロスの声は絶対に忘れないからね。




