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聖女は物理特化の冒険者を目指す。  作者: 玄峰 峡。
冒険者になって。
20/60

嫌だぁぁぁぁ!!

 昇格試験の内容は、Aランク以上の冒険者にお手合わせ願って認めてもらうこと。

 ちなみに、ギルドランクはFからSまで。Fは町中での雑用しか出来なくて、EはFの仕事と町の外での薬草採取などの仕事が出来る。

 そしてDランクから魔物討伐の仕事が受けられる。もっとも、ダンジョンに潜れるのはCランク以上だけど。だからDランクだと草原にとかにいる魔物の討伐ってところかな。


 昇格試験を受ける基準は仕事で最高評価の10点を100回以上とったかどうか。

 これが案外難しくて、ここまで来るのに何年もかかった。それでも、私の年齢からするとかなり早い成長速度らしい。


 とまぁ、こんな説明はさておき、昇格試験は無事合格をもらった。

 Eランクの仕事にかこつけて魔物を狩ったりしていたし、ハロスに鍛えてもらっていたからね。


 そして今は私の誕生日兼昇格記念のお祝いのお食事会を開いてくれるというのでその会場、といってもギルドの経営する酒場、に来ている。


 ようやっと人が集まって、さぁ始めよう!という時になって彼が、カイルが飛び込んできた。

 面倒なこと極まりない!!私のワクワクを返せ!!


 挙句に、


「おい、お前。オレと一緒に魔王退治にに行かないか?」


 とかほざきやがる。

 この間の敬語はどこにいったんだよ!?というか、この間逃げた時点で察しろ!行くわけないだろ!!


 そんな私の思いを無視して彼……いや、もはやアイツが話し続ける。

 魔王を倒せば世界は救われるだの、魔王を倒せばお前は憧れのチャーチに入れるだのなんだの。別にチャーチに入りたくないし、そもそも私の目的は魔王を殺させないことだし、何というか言っていること全てが的外れな感じ。カイルの言っていることの何処にも惹かれない。


「なぁ、ミーナちゃん。あのちょっと危ない頭の子はお友達かい?」


 ヒソヒソと引き気味の声で訪ねてきたのは、この酒場の実質的な経営を任されているメルダロッテさん。みんなは親しみを込めてメル婆って呼んでいる。


 この酒場はギルドの登録者がお客さんの大半だから、イかれてる人とかもたまに来る。

 実際、私も絡まれたことがあるからわかる。やばい奴はやばい。


 そんな場所を切り盛りしているメル婆が引いてるってことは内に秘めたヤバさが有るってことだろう。

 関わりたくないわぁ、もうすでに関わっているけど。

「いや、向こうが一方的に知ってるだけだから。メル婆、無視しよう」


「そうかい、それなら良かったわ。あんな危なそうな子と友達だ、なんて言ったら全力で説得するところだったよ」


 メル婆、もし仮にそうだったとしたらお願いします。説得してください。

 私も世界が例え滅んでも、いやこれは例えにならないな。えっと、例え世界が反転しても?友達にはなりたくないです。ましてや同じパーティになって魔王討伐とか絶対に嫌です。



「……っと、言うわけなんだ!どうだ?一緒に行きたくなっただろう!!」


 やっとアイツの話が終わったのが、約30分後。

 私たちはもうすでにどんちゃん騒ぎをしていた。お酒を飲んで酔っ払っている人もいる。


 アイツの話?まともに聞くわけがない。

 私の目的と真逆だしね。そんなこんなで無視してパーティを楽しんでいたんです。

 楽しんで、いた、んです。そう、過去形なのです!!


「おい!返事をしろ!!」


 急に後ろから腕を引っ張られ、バランスを崩してしまった。

 倒れると思って衝撃に身構えたけれど、一向に襲ってこない。恐る恐る目を開けて頭上を見ると、そこにはおっさんがいた。


「お嬢、注意散漫だぞ。気をつけろ。

 おい、ガキ。女性を転ばせようとは、なってないんじゃないか?」


「ありがとう、おっさん。でも、今のは私が気を抜いていたのが悪いから。それに、おっさんのおかげで怪我はないし、大丈夫だよ」


 おっさんの腕からするりと抜けようとしたが、手を離してくれない。

 むしろ、手を引いて自分の陰に私を隠そうとしている。ンンンン??


「ジェッド……貴様!」


「ガキが」


 私が逃げた後に何があったんだ!?

 かなり険悪というか、カイルが一方的に目の敵にしている感じがする。それをおっさんが口調こそ悪いものの優しい目で見下ろしている。

 本当に何があった!?


 《コール。あの後、個体名・ジェッドは個体名・カイルに剣技の指導を行なっていました。》


 おっさん!?!?!?いや、何してるの!?


 あ、お久しぶりです!天の声?いや神王様か!!


 《コール。お久しぶりです。》


 あれ?なんだかずいぶん会話が成立するようになったような……

 って、そんなことよりおっさん何してるの?

 そりゃ、敵だと思って斬りかかった相手に剣の指導をされたらムカつくわ。お前にとって俺はその程度なのかって敵対心を更に燃やすわ。それは、わかるよカイル。


 でもさ、自分で言うのも何だけど、今は私のことをお祝いするパーティなの!

 そんな場所でやらないで!!10歳にして過剰ストレスで倒れそうだよ!?


 やばい。今にも切り掛かりそう……。ええい!こうなりゃヤケクソだ!!


「……カイル、だっけ?私、行かないから。魔王討伐とか興味ないし」


 頼む、これで引いてくれ。この場を立ち去ってくれ!


「なら、オレと勝負しろ!オレが勝ったら、一緒に来い!」


 そうなりますよねー!

 さっきまでのテンションだとそうなりますよね。むしろそれにしかなりませんよね!!なんとなく予想していました!!


「であれば、俺が審判を務めよう」


 何気におっさんも乗り気になってる!?

 本当にやるの?やらなくちゃダメ?……はい、お二人とも目がマジですね。本気と書いてマジと読む目ですね。


 あーもう分かりました!!こうなったらなるようになれ、だよね!!!!

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