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聖女は物理特化の冒険者を目指す。  作者: 玄峰 峡。
決断までに必要な道
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覚悟を決めます!

さっきまで気絶していた私に、ハロスはお茶を入れてくれた。部屋も人払いしてくれたし、感謝しか浮かばないな。

ちょっと取り乱して恥ずかしいところも見せちゃったから、反省しなくちゃ。


「……で?あのチャーチの人に雪が取り付いていたんだよね?どうするつもりな訳?」


「取り付いてったっていうか、黒い靄みたいだったけど。でも、あの雪がそんな真似を進んではしないと思うんだよね。だから、理由を知りたい」


「じゃあ、聖女になるの?チャーチに行くつもり?この世界を救う約束より、前世の姉を優先するの?」


ハロスが、キツい物言いで聞きただしてくる。

たしかに、こんな事を言ったらそう思われても仕方がない。でも、違う。私がやりたいのは、チャーチに入る事じゃ無いんだよ。


「ハロス、私は約束を破らないよ。チャーチには行かない。職業が聖女になるのはミーナである以上避けられないけどさ、チャーチには行かない。

世界救って、そんでもって雪の事を知りたい。雪のことを知れたって、世界を救えなきゃ意味ないから」


世界を守ることの方が先決でしょ、って言おうとしたらその言葉を遮られた。

遮ったのは、ハロスではなくって……


「ミーナ!大丈夫!?」


扉を大きな音を立たせて開けた、ライアーナちゃんだった。

って、え?ライアーナちゃんってそんな力あったの??おかしくない!?


「あ、ごめん!今呼び捨てにしちゃった!!」


いや、それは全然い良いんだよ?むしろ呼び捨てにして欲しかったし。

それより、なんでここにいるんですか。ハロスが人払いしたって聞いたんですけど……


そんなふうに思ってそっとハロスに視線を向けると、アイツは頬を引きつらせて固まっていた。

え、何。何がどうなってそんな表情になってるの?ライアーナちゃんが何かおかしなことをしたって事??


『ミーナ、よく聞いて。あの子、【スキル破り】のスキル持ってるよ……』


スキル、破り?何なのそのスキル。

というか、表情変わってないのに、【念話】の声はかなり冷静だね。ある意味器用ですごいわ。


『俺様の張った【結界】のスキルを破ったんだねぇ……しかも疲れてる様子もないし、将来かなり有望かもね。しっかり捕まえときなよ』


え?いや、何でそんなに冷静に捕まえとけって何ですか。なんか、将来出世しそうな男の子を見つけて、今から胃袋掴んどけって言われた気分。

というか、人払いってスキルでしてたんだね。普通にこの家の人を使ったのかと思ってたわ。


「ミーナちゃん、大丈夫?死んでない!?」


痛い痛い痛い!ライアーナちゃん、肩を揺すらないで。首がガクガクなって猛烈に痛い。

もし私が死んでたとしたら、ライアーナちゃんが今揺すっているのは誰の肩ですか!?


痛いって必死になって伝えたら、我に返ってくれたみたいで揺するのはやめてくれた。やめてくれたのでけれど、今度は泣き始めってしまって……

私、どうすれば良いの!?


「ライアーナちゃん、大丈夫?」


「だ、だいじょぶ……グスッ、ミーナちゃが、し、でたら、どうしよって……ぅ、うわあぁぁぁぁぁん!!」


そっか、ライアーナちゃんって普段かなり大人っぽいから忘れてたけど、4歳なんだもんね。

そりゃ不安にさせちゃうよね。


「ライアーナちゃん、心配してくれてありがとう。私は大丈夫だよ」


そう言ったら止めようとしてた涙がライアーナちゃんの瞳から溢れ出してきて、気がついたら私まで釣られて泣いていた。

しばらくしたら泣き疲れたみたいで、目を真っ赤にしながら寝息を立てて私に寄りかかって来た。

そんな彼女をハロスに、私が寝ていたベッドに寝かせてもらった。


「ハロス。私の家族は私をチャーチに入れたがってると思う。でも、私はチャーチじゃなくてギルドに入る」


「ギルドに入る目的は?」


「私はまだ世界を知らなすぎる。魔王を救うだけじゃダメ。意識を変えなきゃ、先延ばしにしかならない。まずは世界を知らなきゃ何も行動出来ない。違う?」


しばらく黙って見つめ合う。

すると、ハロスが根負けしたように溜息をついて微笑んだ。


「良いと思う。特例でギルドに入れてあげても良いよ」


「本当に!?」


確認すると、頷いてくれた。

ただし、親にちゃんと説明してからって条件付きではあるけど。

少し過保護なところがあるから許可を出してくれるかは微妙だけど、しっかり説得して認めて貰わなくちゃだよね。


少し気が抜けたのか、眠気が来て瞼が下がって来る。


「ハロス、また明日話そーね……」


最後にハロスが何か言っていた気がしたけど、分からないや。

抱かれてる気がするから、ハロスがベッドに運んでくれてるのかも……


おやすみ、はろす……らいあーなちゃ……





その時は家族が渋々だとしても認めてくれるって心のどこかで思ってた。

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