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聖女は物理特化の冒険者を目指す。  作者: 玄峰 峡。
決断までに必要な道
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久しぶり、私の盟友さん

「ミーナ、そろそろお友達のところに行っても良いよ」


 ある程度来賓の方々との挨拶も終わった頃、お父さんがそう言って笑いかけて来た。


「良いんですか?」


 お母さんと一緒に微笑んで頷くお父さん。良い家族を持ちました。

 先程から婚約者だの何だののお話が来るけど、私を道具として扱わずに丁重に願い下げてくれる2人は本当に良い両親です。


「では、行ってきますね」


 そう告げて、ライアーナちゃんを探す。

 確か、ロベルトさんは壁に貼り付いてるって行ってたよね?だったら、壁際を歩けば見つかるはず!


「ライアーナちゃん!!」


 ライアーナちゃんを見つけ出し、動きずらい服で走る。が、べション!

 コケました。


「だ、大丈夫⁉︎」


 コケた私に気がついて、焦って駆け寄ってきてくれるライアーナちゃん。かわゆす……じゃなくって。


「うん、大丈夫だよ。ライアーナちゃん見つけたら走っちゃった」


「顔から思いっきりコケたじゃん!!真っ赤になってるよ⁉︎」


 平気だよ、と言って、安心させる為に【治癒】をかける。


「ほら!」


 ほら、じゃないよ!!なんて言って怒ってくれるライアーナちゃん。なんだか擽ったくて笑ってしまう。

 他の友達は私に【治癒】が使えると知ってから、距離を置く様になった。それが嫌だったけど、ライアーナちゃんだけはそれまで通り変わらずに遊んでくれた。

 だから私はライアーナちゃんが大好きなのだ!!


「もう……それより、主役さまがこんなとこにいて良いの?」


「お父さんたちは良いって言ってくれたから。ほら、ご飯取りに行こう?私、緊張したからお腹減ったー」


「ウチはまだキンチョーしてりゅ」


 噛んだ。噛んで照れた。噛んで照れて顔が真っ赤だ。噛んで照れて顔が真っ赤で、超可愛い。

 どこぞの神(ディスティア様)のロリ化よりも断然可愛い。


「大丈夫!ライアーナちゃんすっごくかわいいから!!いつにも増してすっごくプリティだよ」


「あ、ありがとう……」


 ライアーナちゃんが照れてる。可愛い。神は地上に居たんだね。ん?神?

 どこか違和感を感じて、ライアーナちゃんの後ろに目を凝らした。

 ……見間違いかな?見間違いだよね?ここに居るわけないよね?招待客の中に名前はなかったはずだもん。


「どうしたの?ミーナちゃん」


「あのね、ライアーナちゃん。彼処に、長い黒髪の人っている?」


「長い黒髪?」


 そう言って私も指差した方を見るライアーナちゃん。


「いるけど。あの人って、協会長(ギルドマスター)の人でしょ?一昨日辺りに急にギルドマスターが変わったって、それがあの人だって父さんが言ってたよ」


「ぎ、ギルドマスター?」


「うん。って、どうした?」


 ギルドマスターだとかそんなことはこの際どうでもいい。

 後ろからライアーナちゃんの困惑する声が聞こえるけど、それも今はどうでもいい。

 そんなことより、そんなことより……


「何でお前が此処に居んだよー!!」


 全力で【魔装】と【強化】と【狂化】と【鬼化】と【神化】の5つをふんだんに使って飛び蹴りをした。もちろん、助走もちゃんとつけて。


「ぐはぁぁぁぁぁっ!!」


 ナイスリアクション!!さすがだね!!

 あ、さすがにバレない様にちゃんと【幻覚】をかけたから、急に飛び蹴りをかました4歳児にしか見えてないよ。断じてスキルを使った様には見えてないよ。

 ……いや、それでも危ない子だわな。


「「「ギルドマスター⁉︎」」」


 ギルドマスターと呼ばれ、私に蹴り飛ばされた男と話していた人たちは一斉に私を睨みつけてきた。

 怖いですよ。相手はまだほんの4歳のお子様ですよ。


「いやぁ、こっち来てんなぁとは思ったけど、まさか飛び蹴りくらうとは思ってなかったぜ……」


「何馬鹿なこと言ってんの?(スキル使って)飛びかかろうとしてたの気づいてただろ。気づいた上で避けずに威力を相殺してワザとオーバーリアクションしただろ」


「まぁな。お前が(スキル使って)飛び蹴りをかまそうとしてんのは気づいたわ。というかワザと気付かれる様にしてやがったろ」


「まぁ、ね。お前が此処にいんのが悪いんだよ」


 蹴り飛ばした今回のパーティの主役である4歳児と、蹴り飛ばされた成人した見かけのギルドマスター。

 そんな私たちがタメ口で話していることに疑問を感じない人が居ないはずがない。ましてや、私たちは本来、初対面の筈なのだ。


「ミーナちゃん!!」


「ライアーナちゃん、どうしたの?」


「どうしたの?じゃないよ!なにやってんの⁉︎」


 慌てて駆け寄って来たライアーナちゃんに思いっきり肩を揺すられる。き、気持ち悪い……。


「おっと、そこまでにしてやんな。大事な友人なんだろ?」


 いつのまにか立ち上がったギルドマスターがライアーナちゃんの頭にポンと手を置く。

 すると、我に返った様にごめん、と私を解放してくれた。


 でも、今回はライアーナちゃんは悪くないと思うんだ。

 誰だって友達が他人にいきなり飛び蹴りしたら驚くだろうし。うん。今回は全面的に私が悪い。


 いつのまにか出来ていた人だかりの真ん中で、周りを意に介さずにギルドマスターは声を出して笑った。

 あの独特な、「ニシシシッ」という笑い声をあげて。綺麗な様な、清々しい様な、はたまた不気味な様な、形容し難いシニカルな笑みを浮かべて。

 そして、彼は私に向かって言った。


「久しぶりだな、ミーナ。ちっさくなったなぁ」


「誰がちっさくなっただ。成長したわ。といってもまだ4歳だけどね」


 そして私は、()()()()でコイツによく見せた不敵な浮かべてみせる。







「久しぶり、ハロス。そっちはちっとも変わんないんだね、私の盟友さん」

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