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煌帝と呼ばれた破壊王

珍しく順調に書けてる気がしないでもない。

「RelicCode」「才女の異世界開拓記」のカクヨム版をカクヨムにて更新中。

詳しくは後書きで。

 シャルレアによって両断された蟲は塵となって消えた。


「本当に全部消えてなくなっちゃうのね」


「魔力で具現化しているだけの存在だからな。存在を断たれれば元に戻る」


 そう、後には何も残らないのだ。


「素材も得られないって狩り損じゃない?」


「素材? 何に使うんだそんなもん」


「いや、だって魔法だっけ? あれ使う道具とかに使わないの?」


「道具は使う奴もいるが、見習い魔法師か三流魔法師かどっちかだ。魔法自体は身一つあれば扱える」


 実際、レイは何も持っていなかった。

 ただただ、己の手をシャルレアに向けただけなのだ。


 それに対して、シャルレアの持つ剣にはいくつか血管の様な紋様が浮き上がっている。


「それが素材ってやつか?」


「そう、私の御先祖様が倒したっていう龍の皮膜でコーティングした剣よ」


「皮膜でコーティングって、逆に斬れ味落ちないか?」


「それが大丈夫なのよねぇ……。ちなみに刀身は爪を使ってるそうよ」


 どんな加工の仕方をすれば、剣になるのかレイには想像出来なかったが、冒険者という職業はモンスターとやらを倒して得た素材を使って装備強化をしているということは分かった。


「それで、さっきの突進を抑えたのはどうやったんだ?」


「正面から受け止めたやつ? あれは、単に気で身体強化しただけよ? 私の素の腕力で止められるわけないじゃない」


「気か……。魔力の流れは感じなかったから、魔力と似たような性質を持つ別のエネルギー何だろうな」


「武術を習うと自然と身に付くものだから、詳しい理屈はよく分からないわ。あえて言うなら、その一瞬、凄く集中するって事くらいかしら」


 シャルレアはそう説明してくれたが、抽象的過ぎてレイは分からなかった。

 彼女は武人であって、神秘学者ではない。

 適当な言葉が見つからないのは仕方のないことだ。※注・脳筋とは言っていない。


「ところで、二人は大丈夫だったか?」


 レイは思い出した様に背後に庇った二人を見やる。

 そこには信じられない物を見るかのように目を丸くした二人がいた。


「魔法って何ですか?」


 恐る恐るではあったが、レイに問いかける。

 少女の名はアイナ・イスダール。抱えているのは妹のイリーナ・イスダールだ。


 レイはシャルレアに話した内容を、更に噛み砕いて三人に説明する。

 アイナは説明を聞いてもまだ信じられないようだった。


「本当にそんな事があるんでしょうか?」


「まぁ、気持ちは分かる。支援魔法は素人が見ても分からない上に、この世界には独自の身体強化技術が存在するからな」


「でも、私の力じゃ切れなかったわよ?」


「人に聞いた実体験では、目に見える事実に適わないもんだよ。何にしても、二つの世界が融合したという推論が正しいか判断するためにも早くオルフェニアへ行こう」


「急ぐ必要あるの?」


「ムカデがまだいるかもしれないからな」


 レイの発言は三人に衝撃を与えた。

 今さっき倒した相手がまだ居ると言うのだから当然だ。


 魔物は魔力さえあれば何処にでも出現する。

 そして、魔力を核としている以上、幾らでも出現する。

 その多くは、あるタイミングで一定数同時出現する事が多いのだ。


 以前、魔法の世界では大量発生した巨大な蟻によって街が一つ飲み込まれるという事件が発生している。

 殲滅こそ容易に済んだが、後処理は酷いものだった。

 魔物を倒せば核である魔力が放出される。

 一箇所の魔力濃度が高くなると生命に影響を及ぼすのだ。

 この魔力汚染と呼ばれる災害の始末は、蟻の始末より圧倒的に面倒だった。


「あんなのがいっぱいいるってこと?」


「流石に余程のことがない限り、一人で対処出来ないほどじゃない」


「それは、私と違って武神たちなら何とかなるかもだけど、それでも一人では多分無理よ?」


「世の中には優秀な魔法師もいるという事さ。そっちの武神なんて呼ばれる人たちと同じようにな」


 そして、四人はその場を後にした。


 § § §


「おい、また湖に戻って来たぞ。これで何回目だ? 方向音痴にも程がある」


「マズいわ……」


「え? マジで道忘れたの?」


「そうじゃないわ。これ、ダンジョントラップの木霊迷路みたい」


「ダンジョン?」


 武の世界には冒険者という職業がある。

 断じて外を渡り歩く旅人ではない。


 冒険者の仕事は未開の土地によるモンスター調査を始め、魔族の生み出すダンジョンと呼ばれる研究施設の襲撃と破壊が主となっている。


「ダンジョンは地下に造られることが多いけど、過去には廃れた古城とか、農村なんかをダンジョン化した魔族もいたそうよ」


「生み出す力もそうだが、木霊迷路ってまんま魔法何じゃないのか?」


 レイがそう言うのは、魔法の世界にも相手の方向感覚を狂わす結界魔法というものが存在するからだ。

 しかし、魔族のダンジョンで見られる木霊迷路とは、身体強化と同様に少し勝手が違う。


「これはダンジョン内部でしか使えないの。そもそもダンジョン生成は魔族特有の能力『異空間制御』を利用したもので、ダンジョン内部って実は異空間何だって。それで、自分の領域だから罠とか仕掛け放題っていう……」


「それって入った奴を直接呪い殺せちゃうんじゃないか?」


「流石にそこまで万能って訳でもないみたいよ」


「で、いつの間にかここはダンジョンと化していたということか?」


 レイは周りを見る。

 魔力的な仕掛けは一切ないし、誰がどう見てもさっきまでの湖だ。


「森をダンジョン化した事例はあるのか?」


「森は閉鎖的だから出来るみたいよ。今も瘴気の森があるくらいだから」


 瘴気の森って何処にでもあるもんなんだなとレイは思ったが、あえて突っ込むような真似はしない。


「何にしてもこのダンジョンモドキの主を探して倒すなり、ダンジョンから脱出するなりしないといけないわけか」


 レイはアイナとイリーナを見やる。

 怯えてないかと心配してのことだったが勘違いさせてしまったようだ。


「私のことは置いていって頂いて構いません。ですが、妹だけは……」


「いやいや、二人ともちゃんと連れてくからそう悲観的にならないでくれ」


「まぁ、当然の判断ね」


「ですが、姫様を危険に晒す訳には……」


「バッ、それは言うな!」


「もう遅いよ。さっき聞いた」


 致命的なところまで既にアイナが話しているにも関わらず、なおも隠そうとするシャルレアにレイがとどめを刺す。


「さて、ちゃっちゃと魔族とやら探してダンジョンを出ようか」


「ほう? 大した自信だな」


 そいつは唐突に現れた。


「おいおい、折角かくれんぼに付き合ってやるって言うのに、隠れてる奴が自分から出てくるなよ」


「おっと、そいつは悪い事をしたな」


 魔族は物怖じしないレイを興味深そうに観察する。

 それはレイも同じだった。


「へぇ? 魔族って初めて見るけど、本当に人間みたいな姿してるんだな。てっきり、人の形を留めていないのかと思ってたよ」


「そういう役回りはモンスターに任せてしまっているのでな」


「まぁいいや。シャルレア、二人を頼むよ。アレの相手は俺がする」


「一人じゃ危険よ。二人でも勝てるか分からないのに」


 シャルレアはそう忠告するがレイはそれを聞き入れず、手を振って大丈夫だと言いながら魔族の前へと進み出た。


「さて、先手は譲ってもらおうかな?」


「良かろう。ここの主として挑戦者に先手を譲るのは武人として至極当然。何処からでもかかってくるが良い」


「魔族って意外と話の分かるやつだったんだな。んじゃ、先手は貰うよ」


 そう言ってレイはその場から一歩も動かずただ手を前に伸ばす。

 そして、指を鳴らした直後だ。音もなく閃光が目の前を貫く。


「何だ今のは?」


 危険を感じた魔族は間一髪、射線から身を逸らしていた。

 閃光は肩を掠めたらしく、魔族の左肩は焼け爛れている。


「何って俺の使う魔法だよ」


「魔法だと?」


「俺はもう一つの世界で魔法師をやっている者さ。魔族みたいに研究してたり、冒険者みたいに外に出ていたりな」


「あの変な生物のいた世界の人間か……。実に興味深い! バラして研究材料にしてやろう!!」


 そう言って魔族はレイの下に疾風の如く駆ける。しかし、そこにレイの姿はもうない。

 疾風を上回るスピードで移動したのだ。


「クソッタレ! なんて出鱈目なやつだ」


「そう言うな。ほら、次は本数増やすぞ」


 レイの周りには五つの魔法陣が浮かぶ。レイが指を鳴らすと五つ同時に閃光を放った。

 避けきれないと悟った魔族は防御に集中する。

 しかし、レイの放つ破壊をもたらす閃光が、その程度で防ぎ切れるはずもなく。

 魔族は呆気なく腕を吹き飛ばされてしまった。


「うおおおおぉ!」


 魔族はその生命力の強さいえ絶命する事はなかったが、額には脂汗が滲み苦悶の表情を晒す。


「凄い……。これが魔法?」


 一方、その様子を見守っていたシャルレアは舌を巻いていた。

 幾らレイが魔法という未知の力を扱えるとはいえ、魔族相手では分が悪いと思っていたからだ。

 だが、それは間違いだったのだと気付く。

 先程のムカデを自ら倒さなかったのは、自分を巻き込まないようにするためだったのだとシャルレアは理解した。


 シャルレアはもう一度、レイと魔族が交錯した地点を見る。

 交錯した回数はわずか二回。

 一度目の閃光は真っ直ぐに地面を、木々を抉っている。

 二度目の閃光は地面に向かって撃たれた為に、その閃光は地面を貫き、魔族の周りの土は熱せられ赤く燃えていた。


 そんな技を繰り出したにも関わらず、レイは欠伸をする様にその結果を確認していた。


「お前、本当に人間か?」


「魔族にそれを言われるとは……。別にこのくらい普通だろ?」


「普通な訳あるか!」


 魔族はそう突っ込むが、レイはどこか吹く風だ。


「なぁお前、手傷負ってたよな?」


「ああ。お前らに会う前に変な巨大生物の群れに遭遇してな」


「なら、取引しないか?」


「取引ですって?」


 シャルレアは信じられないとでも言うようにレイをみる。

 魔族と取引出来るような人間は今までいなかった。

 魔族とは達人クラスの武人がようやくサシでやり合える相手であり、いくら腕がよくともシャルレア程度の実力では到底一人で太刀打ち出来ないからだ。


「このダンジョンだっけか? こいつを元に戻せ。そしたら、見逃してやるし、その巨大生物の群れとやらも消してやる」


「おいおい、マジかーーって、その目は本気だな。分かった。その取引乗ってやる。ただし、万が一始末しきれなかったらダンジョンを再構築して、アイツら喰わせてもらうぞ?」


 そう言って魔族はシャルレアたちを顎で指す。


「それで構わない。シャルレア! そういう訳だから、そこから動かず三人で固まってろよ」


 ーーでないと、巻き込んじまうからな


 しかし、シャルレアはまだ知らない。

 動いてたらいけないのは、射線を確保するためだと思っていたからだ。

 そして、シャルレアはそれが間違いであったと理解させられることとなる。


 魔法の世界において破壊王と呼ばれた最強魔法師の一人、《煌帝》レイ・ラグナの力の一端を目の当たりにするのだからーー

皆さん、こんにちは。初仁です。

今のところは順調に書けてます。

でも、それは他の二作品も序盤はそうだったので、10部超えた辺りからが勝負ですね。

前書きに書きましたが、「RelicCode(カクヨム版)」「才女の異世界開拓記(カクヨム版)」の更新を始めました。

なろう版を元に設定変更も厭わない加筆修正を加えたものになります。

今のところは大幅な設定変更も加筆もありませんが、表現の変更や数行の加筆や削除をしてより読みやすくなるよう努めています。

なろう版に比べると更新は遅いのですが、まだ読んだことのない方はこの機会に是非、一読していただければと思います。

まぁ、カクヨムは会員登録しないと評価出来ないんですけどね。

※なろうの場合は作者の設定次第。私は全ての方から受けられるようにしてますが、中にはログインしている人からのみの受付設定にしている方もいらっしゃるかも。


なろう、カクヨム共々よろしくお願いします。

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