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第1章裏 異世界の異能力、それは敵か味方か

 私は今ボーダー地区の地区長を務めている。


 ここ最近になって謎の紙が図書館より発見され予言の書だと今、巷では話題になっている。私もそれを見たが何かの小説の一部だろうと考えている。


 そして我が国の王にその事を伝えると興味をを示し、それを見に来た。そして王はあの紙の隠された文字を探し出した。そこにはこの世界に終わりをもたらす者が現れるといった文章になったが、余計に陳腐さが増した気がする。


 だが国王はこの事をすごく危惧していた。何故かは分からないがゼロとレイという名前にやたらと固執していたようだった。




 「アンドリュー区長」


 「なんです?」


 ノックもせずに役所の受付の女性が私の部屋に入って来た。


 「住民からの苦情です」


 「また、ダストの事か?」


 「はい、いっぱい来てますよ。なんでも街中を歩いていたらたまたまいて、ぶつかったら腕を凍らされたとか」


 「どうしたものか・・・ダストに関する苦情は毎日のように来る」


 ダスト、前々から問題視されていた事だ。ダストはこの街にいる家の無い女の子だ。ダストと言う名はあだ名で意味はそのまま。街の『ゴミ』だ。


 「でも一部は嘘ばっかですよ。例えば、何もしていないのに突然頭を殴られて全治一か月の怪我をしたとか、二十代の意見です。大人をどうやって殴ったのかって話ですよ。って言うかそれで全治一か月だったら相当貧弱ですよその人」


 「君はダストをどう思うんだ?嘘ばっかとはいえ一部は真実もある」


 「あ、私ですか?あんまり関わりたくはないですよ。この間めっちゃ睨まれましたもん」


 ダストの被害は今のところこれと言った被害はないが、かつてあの子が両親を殺したことや、保護を試みた人たちに重傷を負わせた事があり、今ではこの街の負の象徴のようなものだ。


 「でもあの子、一回だけ顔をしっかり見れたことがあるんですけどね、すんごい可愛いかったんですよ。ほんとお人形さんみたいで、もったいないですよね~」


 「そんなに気になるならダストをアイドルにでもしてあげたらどうだ?」


 私は軽く冗談を言った。


 「冗談言わないで下さいよ!話しかけたら死んじゃいます!ほんと、親殺しとかしない普通の子ならいいんだけどねー」


 「そうか、だったらここで無駄話せずに仕事に戻りなさい。サボりはいけないよ」


 私はニッコリ笑い、注意した。


 「あ、はい。バレましたか。ホホホ」


 「君、結構怖いもの知らずだね。上司の前で堂々とサボろうとするなんてさ」


 「それが私です、周りに媚びを売ってなんぼ。それでもダストだけは怖いですけど」


 受付の女性はそそくさと持ち場に戻った。


 「つくづく肝が据わってるな・・・しかし、どうしたものか」


 その直後だった。さっきの受付の女性が戻って来た。少し慌てた様子だ。

 

 「今度はどうしたんだね」


 「いや、今ビーンさんが来てるんですけどなんでも壁の外側から避難者を連れてきたと・・・」

 

 避難者?まさかこの間のアレックスの言っていた。


 「君、その人物の名前は?」

 

 「たしか、ミカミって言ってました。変わった名前ですね。エイドってこんな感じの名前が多かったんでしょうか」


 ミカミか、どうやら私の思い過ごしだったようだ。あり得ないな、レイが現れるなど・・・


 「でもさっきビーンさんミカミさんを、レイって呼んでたんですよ・・・もしかして苗字!?って事はエイドの貴族の生き残りかしら!レイ ミカミ。ミカミ レイどっちですかね」


 何!?今、彼女はなんと言った?


 「あれ?区長どうしました?」


 「今すぐアレックス国王に繋げれるか?一刻も争う事態だ」


 「は、はい!!繋がりましたぁ!!」


 「早いな・・・」


 受付の女性はあっという間にアレックス国王に連絡をつけてくれた。普段は不真面目な態度が目立つが、結構使えるなこの人・・・


 私は受付の女性を外に出して受話器をとった。


 「アレックスか!?私だ!」


 『どうしたんだい?急に』


 「現れたんです。レイが、この街に!!」


 『なんだって!?どうやって現れたんだ!?』


 「ビーンが壁の外を見回り中にバケモノに襲われている避難民を見つけたと・・・彼はミカミと名乗ったそうですが、ビーンが彼の事をレイと呼んでいたそうで」


 『ミカミ・・・レイ?もしかしたらビーンは何か知っているのかもしれない。それで素性を隠そうとしているのかも』


 「どうします?」


 『決まっている。彼はきっとアマナ君と同じだ。やらなければならない・・・』


 「そう、ですか。しかし今はビーンと一緒にいます。中々に手が出せない」


 『そうだよね、だったら・・・間接的に殺すしかないか』

 

 「だとしたら・・・火災だ・・・そうだそれが良いでしょう、ちょうど今この地区を脅かしている存在がいる。そいつを含め事故に見せかければ!」


 『それしかないな、その彼には悪いが・・・』


 「えぇ、後はお任せください」


 ・


 ・


 ・


 その後私は暗殺に適した三人を招集した。まだ若いがそこそこには強い。火災に乗じて二人を抹殺することは楽だろう。


 準備は整った。消防署も誰もいなくなるようにした。そしてダストが根城としている路地の近くのアパートにミカミを呼んだ。後はその路地に火を放つ。


 ダストの姿が見えなかった。どうやらビーンとミカミと一緒にいるようだ。レイは一旦は世界を救う者。ダストと一緒にいるという事はミカミは既に予言の通り行動し始めているのか。


 仕方ない、まずはダストを引き剥がすか。この火災から上手く逃げてしまったようだし、ビーンに悟られるのはマズイ。


 「おーい、大丈夫でしたか?」


 私は保護をすると言ってミカミとビーンからダストを引き離した。彼女はぎこちない笑顔をこっちに向けた。少々気味が悪い。


 私はダストを連れて路地に入った。悪く思うなダスト、これも平和の為だ。


 私は部下に指示を出し、ダストを拘束した。




 私はこの時ミカミを完全に侮っていた。彼は本物の救世主だという事をこの時思い知らされることとなった。


 私のやろうとしたことは完全に失敗に終わった。私は逆にミカミに追い込まれる形となってしまったのだ。部下の三人は倒され残るは私一人だけだ。


 だが私は認める訳にはいかない。ミカミは既に脅威になり得るほどの力を持っている。この力は国の存亡を危ぶませるほどの可能性を秘めている事が十分に分かった。


 私は、私なりの正義を貫かねばならない。私は私たちの力でこの世界に平和を取り戻す。例えその為に今ある平和を踏みにじっても・・・

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